この蒼い空の下で
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「ごめんねって、謝りたいの。政宗は悪くないから気にしないで、って。だけど私は何があったのか全然覚えてないでしょ? なのに謝っても口先だけみたいに感じるの」
「そんなこと無いんじゃない? 何があったのかを覚えてなくても、美夜ちゃんが本心から謝りたいって思ってるなら、必ず竜の旦那にもその気持ちは伝わると思うよ」
「そう、かなぁ」
「きっとね。でも謝らない方がいいと思うよ」
「なんで?」
「美夜ちゃんに謝られたら竜の旦那は余計自分を攻めると思うから」
今の言い方が気になった。まるで佐助は私が忘れてしまった何かを知っているみたい。
ふと、思い出した。そういえば、佐助と初めて会った時、私は佐助になんで生きているのか聞かれた。誰かと勘違いしてるんじゃないかと言ったら無理矢理胸元を見られた。政宗がしたみたいに。
「ねぇ・・」
佐助は何があったのか知ってるんじゃないの? そう聞こうとしたけれど、いきなり冷気が大量に流れ込んできたために意識が佐助から逸れた。
「姿が無ぇと思ってたら、なんでテメェはここに居んだよ」
なぜか不機嫌な政宗が立ってた。後ろに小十郎さんの姿も見える。
「そんなに睨まなくても俺はあんたの『敵』にはならないよ」
何となく含みがあるように聞こえた佐助の台詞に、政宗はさらに不機嫌になった。それを見た佐助が意地の悪い笑みを浮かべた。
「嫉妬深い男は嫌われるぜ?」
佐助の茶化した口調に政宗の視線が鋭くなった。けど、
「政宗が誰になんで嫉妬なんてするの?」
気になったから聞いただけなのに、なぜかみんなの視線が私に向いた。空気まで居心地の悪いものになった気がする。訳が分からなくて首を傾げたら、政宗がはぁ、と大きくため息を吐いた。
「無自覚だったか」
「の、ようですな」
苦笑混じりの小十郎さんの声。何が無自覚なの? ますます訳が分からない。分かっているらしい佐助が肩を竦めた。
「どうりで真田の旦那と平気で逢い引きするわけだよ」
「逢い引きだと?」
「ちょっ、なんで睨むの!?」
政宗に睨まれる意味が分からなくて、『あいびき』発言をした佐助に視線で助けを求めたら「俺様知ーらないっと」と言って一瞬のうちに姿が見えなくなった。言い逃げするな! 馬鹿っ!
こうなったら小十郎さんに! と思ったのに、眼が合った小十郎さんは私が悪いとでも言うように首を振って障子を閉めてどこかに行ってしまった。
閉める前に政宗に「ほどほどに」っていうくらいならここに居てよ! かなり怒ってる、っていうか怒ってるように見えるくらい不機嫌な政宗と二人きりになんてしないでよ! 小十郎さんの鬼ー!
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