この蒼い空の下で

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どうやって聞き出そう。ぐしゃぐしゃと火鉢の中の灰を火箸で掻き混ぜ絵を消しながら考える。

言葉巧みに誘導して聞き出す。なんてことが出来たら楽なのに。そんなこと私には逆立ちしたって出来ない。むしろ言葉巧みに話を逸らされそうだ。

いっそ催眠術とか? って胡散臭っ! 佐助の笑顔並に胡散臭いよ!


「あーあ、佐助みたいに見ただけで相手の考えてることが分かればいいのに」

「美夜ちゃんには無理だと思うよ」

「ぅわっ!」


独り言のはずなのに返事が返ってきてびっくり。いつの間にか火鉢を挟んだ向かいに佐助が居た。いつものことだけどいい加減普通に現れてよ! 私は慣れるなんて無理なんだから! って思うだけ無駄なのも分かってるけど!


「ねぇ。なんで私には無理なわけ?」

「ここの問題」


トン、と佐助が自分の頭に人差し指を当てた。それはアレか? 私が馬鹿だと言いたいのかコノヤロー!


「って言ったらどうする?」


そりゃあもちろん一発殴りたいです。

あはー、と笑う佐助を見ながら火鉢の影で拳を握った。佐助のことだから私がこんなこと思ってることなんてバレてるだろうけど!


「今のは冗談だけど、美夜ちゃんは読心術なんて覚えない方が良いよ。美夜ちゃんじゃなくなっちゃうからね」

「それどういう意味?」

「美夜ちゃんの良いとこが損なわれるってこと。先に言っとくけどそれが何かは言わないよ。無自覚だからこその『良いとこ』だから」

「むぅ」


ちょっとくらい教えてくれても良いのに。そー言われると余計気になるのにさ。


「で?」

「ん?」

「なんで読心術が出来たら、なんて思ったわけ?」

「言わなくてもどーせ知ってるくせに」


どっかから絶対に盗み見や盗み聞きしてると思うくらい佐助は私の行動を知ってる。だからジト目で見ながらそう言ったら、佐助は軽く肩を竦めた。


「竜の旦那にバレずに聞くのはさすがの俺様も無理だよ。それに右目の旦那に見張られてたし」

「右目って、小十郎さん?」

「そ。くれぐれも二人の邪魔はするな、ってさ。俺様睨まれちゃった」


怖いね、あの旦那。って言いながらも怖がってる感じが全くしない。それより、小十郎さんありがとう! 無意識に政宗にしがみついてしかも大泣きしてるとこを佐助に見られてたら絶対にからかわれてたと思うもん。

あ、でも今の私の顔見れば大泣きしたことバレバレか。あれ? でもからかってこないぞ? 何でだろ。小十郎さんに何か言われたのかな?


「話し戻すけど、何で読心術に興味持ったわけ?」

「政宗が私に何か隠してるの」

「隠し事されたのが嫌?」

「ううん。それは別に良いの。そりゃ知りたいって思うし何で私は忘れちゃってるのかも気になるよ。隠されることもあんまり気持ちのいいことじゃないし・・・。けど、政宗が意味も無く秘密にするとは思えないもん」

「へぇ。随分と竜の旦那を信頼してんだねぇ。それなのに何がそんなに気になってるわけ?」

「・・・政宗に、あんな顔させちゃったこと」


視線を佐助から火鉢に移す。けど、見ているのは火鉢じゃなくてさっきの政宗の姿だ。

弱々しく感じる姿に、深い後悔と自責の念を抱えた目。

どれも政宗らしくない。けど、『らしくない』姿を見たくなかったわけじゃない。むしろ弱い部分を見せてくれたと不謹慎にも喜んでる部分がある。

私が気にしているのは政宗にらしくない姿をさせてしまった原因が私にあるらしいこと。そして私がそのことを全く覚えていないこと、だ。


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