この蒼い空の下で

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どうしよう。ほんと、どうしよう。

もう二度と会えないと思っていた政宗に会えたからってあんなに大泣きするなんて。おかげで瞼は腫れぼったいし頬はヒリヒリするし軽い頭痛までする。

何より政宗にしがみついてしまっていたのが気恥ずかしい。無意識だったから尚更だ。おかげで泣き止んだ今も顔を上げられない。

政宗もなぜか何も喋ってくれない。それどころか時々ドキッとするほど優しい手つきで髪を撫でてくるし、さっきつむじの辺りにキスされたような気がする。

新手のイジメかと思うにはなんだか部屋の中の空気が恥ずかしい。空気が恥ずかしいって何だって思うけど、そう感じるんだから仕方ない。こんな空気初めてだから恥ずかしい以外の言葉が出てこないってのもある。

元々政宗の腕の中は落ち着くのに落ち着かないっていう変な場所だったけど、恥ずかしい空気と様子のおかしい政宗のせいで今はひたすらにいたたまれない。

黙っていると余計にいたたまれなく感じる。ただ抱きしめられてたまに髪を撫でられるだけなのに、なぜかやたらと顔が熱いし鼓動がうるさい。

何か、何でも良いから話題! 話題は無いの!?


「え、えぇと、さ、寒くない?」

「これだけくっついてりゃ寒さなんか感じねぇよ」


ぎゅっと腕に力が篭った。冗談でも比喩でもなく、本気で心臓が口から飛び出しそうになった気がして思わず口を押さえてしまった。

やっぱり、政宗、変だ。イジメでも何でもなくこんなこと言うなんて今まで無かったもん! 変なものでも食べたのかな? それとも、まさか戦で頭でも打ったとか!? もしそうだったらどうしよ! 撲ったら元に戻ってくれるかな?


「美夜」

「ご、ごめんなさい!」

「・・・なんで謝るんだよ」


政宗が怒りそうなことをほとんど本気で考えていたからです。なんて言えるわけがない。言ったら絶対何かされる。頬を潰されるか摘まれるか頭掴まれるかセクハラか。とにかく無事にはすまない可能性大だ!


「な、何でもないよ! 気にしないで! それより何?」


何とかごまかしたいのにジィーッと政宗が見てくるから冷や汗が止まらない。どうしよどうしよとあちこちに視線をさ迷わせていたら火鉢が目に入った。

ヤバい! あそこには政宗にしか見えない絵とバカとドSの文字が残ったままだ!


「あれがどうかしたのか?」

「だ、ダメッ!」


火鉢を見ようとした政宗を止めようと、咄嗟に手が動いて政宗を強く突き飛ばしてしまった。流石に政宗も予想外だったらしく、無防備に畳に倒れ込んだ。


「ご、ごめん。大丈夫? どこか打ってない?」


身を乗り出して聞くと、倒れた体勢のままニヤッと笑った政宗に腰を抱き込まれた。


「え、と?」

「お前から押し倒してくるなんて随分と積極的じゃねぇか」

「ち、違っ!」

「そんなに俺が欲しかったのか? だったらちょうどいい。脱げ」

「・・・・・・・え?」


何がちょうどいいのか分からないしそもそも私は政宗を『押した』だけで『押し倒した』わけじゃない。

それになんで脱がなきゃならないの!? 押し倒した、と脱げ、なんてエロい展開に向かいそうなんだけど!!


「ンだよ。着たままヤりてぇのか?」

「ぅにゃっ!」


腰にあった手が下に降りてお尻をむにっと掴んできた。びっくりしてのけ反る。と、くるりと視界が回った。さっきまでは見下ろしていたはずの政宗の顔を見上げていた。あっという間の体勢の入れ替えに驚いてぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「お前になら押し倒されんのもイイが、やっぱり見下ろす方がイイな」


そう言って満足そうに笑った政宗が私の着物の襟に両手を掛けた。


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