この蒼い空の下で

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お昼ご飯を食べてから幸村と一緒に城下街に向かった。佐助というドSが居ないって最高の開放感! 見送りの時にあいびき楽しんできて、とやたらとにこにこしてたのが気になるけど。

だいたいあいびきってなに? 幸村が真っ赤になって破廉恥って叫んでたけど私あいびきってお肉しか浮かばないんだけど。

門から続く道を歩きながら幸村を見る。佐助の謎のあいびき発言で真っ赤になってた顔は元に戻ってて、これなら話し掛けても大丈夫そうだ。


「ね、まずはどこに連れて行ってくれるの?」

「う、うむ。某が良く行く茶屋にお連れしようと思うのだが、良いでござるか?」

「うん、いいよ。あ、そだ。幸村にお願いがあるんだけど、良い?」

「何でござるか?」

「幸村と私はほとんど歳が一緒でしょ? だから幸村ももっと砕けた口調で喋って構わないよ? 私のことも呼び捨てで良いしね」

「砕けた、でござるか?」

「うん。幸村とは友達になりたいから」


友達、という言葉に幸村は少し眼を見張って、でもすぐに笑顔で頷いてくれた。


「分かった。俺も紗夜とは友になりたい」

「じゃあ改めてよろしくね」

「こちらこそよろしく頼む」


お互いに笑って、そして握手した。手を握るとは言っても握手だからか幸村は破廉恥とは叫ばなかった。

歩くのを再開して少しすると、たくさんの人の声が風に乗って聞こえてきた。声はだんだん大きくなって、大通りに着くと最高潮に達した。道を行き交うたくさんの町人や旅人、それに客を呼び込む店員の声。


「凄い。お館様が言ってた通り凄く賑やか」

「奥州もこれくらい賑やかなのか? 俺は佐助の話でしか知らぬのだ」

「同じくらい賑やかだよ。人がたくさん歩いてて、みんな楽しそうなの」

「そうなのか。伊達殿の人柄が現れておるのだろうな。ああ紗夜、あそこだ」


団子と掛かれた布製の小さな旗? が掛けられた店を幸村が指差した。暖簾を潜って中に入ると現代なら高校生くらいの女の子がいらっしゃいませと笑顔で迎えてくれた。


「あら、幸村様。いつもありがとうございます。今日もいつもので良いですか?」

「いや、今日はもう一人分お願い致す」

「こんにちは」


挨拶したら女の子は物凄く驚いたのか口をぽかんと開けて眼も見開いたまま固まった。そんなに驚かれるような格好してないはずなんだけどなぁ。甲斐に来てからは毎日着物だし、今だって城下街に行くからと佐助が用意してくれた町娘っぽい着物だし。


「か・・・」

「か?」

「母さん大変! 幸村様が良い人を連れていらしたわ!」

「なっ!?」

「良い人?」


驚く幸村と意味が分からない私達をよそに奥から中年の女性がエプロンで手を拭きながら出てきた。この人がお母さんだろう。並んで立つ私と幸村を見てぽかんとなった表情が娘さんとそっくりだ。


「ね? 本当でしょ? あの幸村様に良い人が出来たのよ!」

「まあまあ本当じゃないの! とうとうあの奥手な幸村様にも良い人が出来たんだねぇ」

「ふ、二人とも! 紗夜と俺はそのような関係ではない!」

「幸村様! いくら照れているからって良い人の前でそんな言い方したら嫌われてしまいますよ!」


同じくらいの歳の幸村をお姉さんぶって叱った女の子が今度は私を見てにこっと笑った。


「幸村様はとっても奥手で恥ずかしがり屋なんです。だから今のもわざとじゃないんです。どうか嫌わないであげてください」

「嫌うも何も、私幸村のこと好きですよ?」

「きゃあ! 母さん今の聞いた!?」

「す、すすす好き!?」


なぜか親子で盛り上がり始めた。普通のこと言っただけなのに、なんで? 幸村に聞こうにも幸村はなぜか茹蛸くらい真っ赤になってて、しかも私が顔を見ただけでサッと顔を逸らす有様。だから一体なんなんだ!


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