この蒼い空の下で

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「・・・・・・・」

「・・・・・ん・・んん」

「・・・・・・・・」

「んぅ、ん・・・・っはぁっ!」

「おはよ、紗夜ちゃん」

「おはよじゃないわよ! なんで寝てる人間の鼻摘むのよ!」

「濡らした手ぬぐい置くなって言ったの紗夜ちゃんじゃん」

「だからって鼻摘むな! 結局息出来なくなるんだから一緒じゃない!」

「やだなー。人間は口からも呼吸出来るんだよ? 紗夜ちゃん知らないの?」

「それくらい知ってるわよ! そこまで馬鹿じゃないわよ!」


ああもうムカつくっ!  なんで起きぬけからいきなりこんな息切れするくらい怒鳴らなきゃならないのよ!

イライラしながら部屋から佐助を追い出して着替えを済ませる。ちょうどその頃には朝食が運ばれて来たから食べた。

食べ終わる頃に苛々もやっと治まって、まったりと食後のお茶を飲んでいたら佐助が来た。

今度は何する気だと身構えたけど、お館様が私を呼んでるって伝えに来ただけだったみたい。佐助の後に着いてお館様の部屋に向かう。


「佐助」

「んー?」

「何度も言ってるけど起こさなくていいからね。私自力で起きれるから」

「えー」

「えー、じゃない!」


親切からじゃなくて私で遊びたいだけのくせに!

私がお館様達に全てを話した日から一週間ほどが経った。感情のこととかも話したのに、お館様も幸村も話す前と変わらない態度で接してくれる。

佐助もなんだけど、こいつの場合素直に感謝する気になれない。だって紗夜ちゃんのせいで仕事が増えちゃったよー、とか言ってきて毎日過激な方法で起こしてきやがるんだもん! 

私でストレス発散するな! このドS! 

って思うけど、増えた仕事は私が元の世界に帰るための方法を探すことだろうから、どんなにムカついても幸村にチクるのをちょっと躊躇っちゃう。

でもこれからも毎朝あんな起こし方されるのは嫌だしなぁ。なんて悩んでいる間にお館様の部屋に着いた。声を掛けてから中に入ると幸村も居た。どうやら幸村もお館様に呼ばれたみたい。


「さて、主役が揃ったな」

「主役?」


思わず隣の幸村と目を合わせる。主役って私のこと? 幸村のこと? それとも二人とも?


「紗夜よ」

「あ、はい」

「毎日屋敷の中に居るだけでは退屈ではないか?」

「そんなことないです。幸村が話し相手になってくれますし」

「あれ? 俺様は? 俺様も居ること忘れてない?」

「佐助は嫌いだもん」


ふんっとそっぽを向く。佐助の場合虐めてきたりからかってきたりすることの方が多いんだもん。ある意味退屈しないけど! 

お館様がやれやれ、というように苦笑して、幸村は佐助を叱った。ちゃんと反省しろよ、佐助!


「退屈しておらぬならよい。だがたまには外に出てはみぬか?」

「外、ですか?」

「うむ。外と言うても庭ではないぞ? 城下のことじゃ」

「行っても良いんですか!?」

「もちろんじゃ。奥州の城下も賑やかだと聞くが、甲斐も負けてはおらぬぞ?」


お館様が誇らしげにそう言うからますます行きたくなってきた。どんな所なんだろう。


「案内は幸村に任せよう。幸村、よいな?」

「お任せ下され! お館様!」

「幸村、よろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願い致す」


幸村は私に対しても礼儀正しく頭を下げた。もうちょっとラフで構わないのに。


「あ、佐助は? 佐助も一緒?」

「えー、なになに? 紗夜ちゃんてば俺様が居ないと寂しいの?」

「寂しくない! むしろその逆だ!」


佐助が居たら楽しいことも楽しくなくなりそうだっての!


「佐助にはちと頼みたいことがある。城下へ行くは幸村とおぬしの二人だけじゃ」

「そうなんですか?」


やった! 佐助の虐めから解放されるよ!


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