この蒼い空の下で
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朝食を食べていたらお館様が様子を見に来てくれた。特に不自由は無かったからそう答えたら、お館様はならば良いと笑って私の頭を一撫ですると戻って行った。
昨日の話の続きのことで何か言われるかと思っていたから拍子抜け。どうしてか分かるか佐助に聞いたら、このあとにお館様は用事があるらしく、私の話は長くなるかもしれないからと後にしたんじゃない? って。
ご飯を食べ終わった後、まだ幸村の姿を見ていないから佐助に聞いたら朝の鍛練中だろうって。見に行っても良いか聞いたら案内してくれた。
「紗夜殿ではないか。某に何か用があるのか?」
幸村も私のことを美夜ではなく紗夜と呼んだ。本名を呼ばれないのはなんだか寂しいけど、仕方ないよね。お館様達に迷惑を掛けたくないもん。
「用ってほどのことじゃないよ。幸村が鍛練中だって聞いたから見に来ただけ。だから私に構わず続けて?」
「ではそうさせて頂くでござる」
こっちに寄ってこようとしていた幸村は再び庭の真ん中辺りに戻って行った。縁側に座ってそれを眺める。佐助は横の柱に凭れて見ている。
真剣な表情で鍛練する幸村は手を握っただけで破廉恥と叫びだすほど超が付く奥手には見えない。凛々しくてカッコイイ。政宗みたい。
政宗も仕事や鍛練をしている時は凄くカッコイイ。気をつけていても見惚れちゃうからあんまり見ないようにしてるけど。だって見惚れてたのがバレると虐めてくるんだもん。
「ねぇ、幸村の武器って二本の槍なの?」
「そうだよ。でもそんな驚くことでもないでしょ。竜の旦那なんか両手合わせて六本の刀を使うんだし」
「らしいね。でもそれにも私驚いたから」
だって指と指の間に挟むなんて普通思わないもん。知った時は政宗の握力が凄いのに納得したけど。
幸村も力が凄そうだよなぁ。槍って柄が長いから遠心力とかあるだろうしそれに一本分の重さだってそれなりに有りそうなのにあんなに滑らかに振るってるんだもん。
でも、鍛練する理由は戦があるから、なんだよね? 幸村は優しいけど、でも戦に出たらやっぱり人を・・・。
「何考えてんの?」
「っ!」
横に居たはずの佐助に前から顔を覗き込まれてびっくり。いつ庭に降りたのか全然気づかなかった。
「随分と暗い顔してるって気付いてる?」
頬を押さえる。手元に鏡が無いから分からないけど、そんなにはっきりと表情に出していたなんて。
「何考えてた? 特別に俺様が相談に乗ってあげるよ?」
茶化した言い方だし姿も全然似ていないのに、なぜか太一さんを思い出した。
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