この蒼い空の下で

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パチ、と目を開き、しばらくぼぉっと空を見る。寒い。起き上がると体から茶色に変色しカサカサに渇いた枯れ葉がパラパラと落ちた。前にも似たことがあった。元の世界に帰って来たのかな?

周りを見回すけど、あるのは葉を落としていたり黄葉したりしてる木々があるばかり。どっちの世界なのか判断出来るものが見当たらない。

とりあえず、移動しよう。斜面が緩やかだから多分ここは森だろうし、歩いてればどっかに出るよね? より奥へと進んじゃわないように祈ろう。

着物に着いた枯れ葉を払い落とし、適当に選んだ方向に向かって歩き出すけど、ため息が出る。気分が晴れない。もしここが生まれ育った世界なら、帰って来れたってことなのに。

政宗、勝てたかな? 勝てるに決まってるよね? だって小十郎さんも成実さんも居るんだもん。政宗なんだもん。

そう思っても気になってしまうし不安で仕方がない。でも、もし本当に元の世界に帰って来たのなら確かめることは出来ない。何とかして知ることが出来たらいいのに。


「ん? なにこれ。笛?」


無意識にお守り袋を握ろうとした指に、細い紐が引っ掛かった。お守り袋とは別に何かを首に掛けてて、紐の先をみたら小さな笛がぶら下がってた。

いつの間に? 見覚えも無いし、いつから下げてたんだろ。何となく吹いてみたけど高く澄んだ音が微かに出ただけ。


「わっ!」


壊れているのかなともう一度吹いてみようと笛を口に咥えた直後、いきなり背後から首に腕が回され引き寄せられた。

よろけて背中が腕の持ち主にぶつかる。腕は離れることが無い。緩く回されてるだけだから苦しかったりはしないんだけど、なぜか拘束されてるような気になってしまう。

振り向くと、そこには頬と額を金属板で覆い、鼻や頬にはペイントを施したオレンジ色に見えそうなくらい明るい茶色の髪をした迷彩柄の上下を着た男の人が居た。

自衛隊員? それともコスプレイヤー? どっちにしろこの格好の人が居るってことは帰って来たってこと?


「あの、すみません」

「なに?」

「変なこと聞いちゃうんですけど、ここってどこですか?」

「それ、本気で聞いてる?」

「本気ですけど」


ほんとに分からないから聞いたのに、じぃーっと私を見てくるだけで教えてくれない。この人、私をよろけさせたりしたし実は意地悪な人?


「あのー、教えてほしいんですけど」

「俺の質問に全て正直に答えてくれたら教えてあげる」

「はぁ・・」


やっぱり意地悪な人か? イケメンなのに。そりゃイケメンイコール親切、ってわけじゃないけどさ。とりあえず意地悪でもドSじゃないと良いなぁ。


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