この蒼い空の下で
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「わ、私に何の用? 何かあるから来たんでしょ?」
政宗の意地の悪い笑い方がムカつくからさっさと追い出したくてかなり強引に話題を逸らした。だけど珍しく政宗は私をからかい続けることはしてこなくて、代わりに入口近くに置いてあったお皿を持ち上げた。
「食うか?」
お皿の上にあるのは長方形をした上部が焦げ茶色で他は濃い黄色をしたスポンジ状のもの。
「もしかしてカステラ? 食べる食べる!」
手を伸ばして一つ取ってパクリ。美味しい!
「買ってきたの?」
「作ったんだよ」
「政宗が?」
「Yes」
また一口食べる。しっとりした生地は上品な甘さでいくらでも食べられそう。買ってきたものだと言われても絶対に疑わないと思う。
「政宗ってお菓子作りも上手なんだ」
さすがにこれだけ美味しいと嫉妬する気すら起きない。
「Thank. が、sweetはほとんど作らねえからな、上手くできたのはたまたまだ」
「そうなの?」
「sweetが好きなやつが周りにほとんど居ねえんだよ。作っても食う奴が居なきゃ意味がねえ」
「じゃあなんで今日は作ったの?」
「……そういう気分だっただけだ」
「ふぅん?」
少し間があったし眼を逸らしたようにも感じてどういう気分なのか気になった。だけど下手に追及してからかいが復活したら嫌だから気にしないことにした。
「もう一個食べていい?」
「好きなだけ食って構わねえが、食い気を優先させるのは女としてどうかと思うぜ?」
「え? あっ!」
まだ服着てなかった。うぅ、私の馬鹿! なんでこう政宗にからかわれるようなことばっかりしちゃうのよ。からかわれないようにしようと思ったばかりなのに。立てた膝にごつんと額をぶつける。情けなさ過ぎる。
落ち込んだまま辺りを見回す。服は政宗の側にあった。交差させた両腕で胸元を隠したまま膝立ちで服を取りに行く。と、腰をさらわれて政宗に後ろから抱きしめられて膝に座らされた。
「ちょっと! なにすんのよ!」
「せっかくお前から脱いだってのにすぐ着ちまうなんざ勿体ねえだろ」
「あんたのために脱いだわけじゃないわよ! だいたい小さくて物足りないとか言うくせに勿体無いってなによ!」
「それとこれとは別なんだよ」
「意味分かんなむぐ」
カステラを突っ込まれた。くそぅ、ムカつくけど美味い。カステラに免じて今だけは許してあげようじゃないの。にしても本当に美味しい。またそのうち作ってくれないかな。
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