この蒼い空の下で 弐

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顔に集まった熱が散るのを待って視線を彼女に戻した。


「美夜が痩せた原因が分かったのか?」


美夜に守り石を借りておいたのは、昼にまた美夜をからかっている時に誰かに呼ばれたような気がしたからだ。ちょうど美夜の頬に触れていた時だったためにもしやと思ったのだが、当たりだったらしい。


「事が起こった直後に力の使い方や必要な知識が私の頭の中に流れ込んで来たんだけど、思ってた以上に動揺してたみたい。こんなに大切なことを忘れてしまっていたなんて・・・」


彼女は悔しそうに唇を噛んだ。一昨日、俺を帰した後から必要な知識を再度得られないかといろいろと試したのだという。結果成功し、一つ一つ落ち着いて確かめていき、原因を知ることが出来たらしい。


「原因は何だったんだ」

「衰弱よ」

「What!?」

「人は魂、精神、肉体。この三つが揃って、調和して、始めて『生きて存在する』ことが出来るらしいの。でも今の美夜は魂と精神は離れ、肉体は仮初めのもの。調和してもいなければ完全に揃っているわけでも無い。その不安定で不均衡な状態の影響は、魂、肉体、精神の順に現れるみたいなの」

「つまり、既に仮初めの肉体にまで影響が出るほど弱っているということなのか?」

「ええ。ここではずっと眠った状態だったからとはいえ気付けなかったなんて・・・。貴方に聞かれていなければ危なかったかもしれない」


生身の体だったなら血が出ていただろうほどに彼女が強く拳を握り締めているのに気付いた。だが既に深く悔いた後なのか、彼女は直ぐに顔を上げた。


「神様から授かった石の中に居るおかげで魂への影響だけは少しだけれど抑えられてるみたい。でも石の中には無い肉体と精神までは難しいわ。それに衰弱が酷いと魂と肉体と精神が調和しようとする際の負担に弱った部分は堪えられないみたいなの」


無意識に唾を飲み込んだ。堪えられずに調和しなかった場合、それが何を意味するかなど辿り着く答えは一つしかない。

焦燥ばかりが募る。それでも気持ちを落ち着かせることが出来たのは彼女に焦りの色があまり見て取れなかったからだろう。


「時間は、まだあるんだろ?」

「ええ。でもあと半年ほどよ。神様の力を持ってしても、バラバラになってしまった日から一年が限度みたい」

「美夜に出会った日までがLimitってことか」


半年という期間が短いのか長いのかは考えないことにした。来年の、美夜と出会ったあの日と同じ日までに何としても美夜にこちらの世界に留まる決意を固めさせる。今考えるべきはその方法だけだ。



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