この蒼い空の下で

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「し、成実さんてば冗談うまーい」

「この話、同席してる小十郎から聞いた話だから」

「…………」


空耳とか名前を間違えてるとか思いたい。だって小十郎さんが言ってたなんてそれってマジで政宗が言ってるってことじゃん! 小十郎さんがわざわざ冗談言うとは思えないもん。なんでそんなものっすごいラブラブな仲って勘違いされるような断り方するわけ!? ただでさえお城で働く人達からバカップルみたいに見られてるってのに! 政宗の馬鹿!


「もっと他の断り方しろってのよ!」

「でも一番効果的な方法だと思うよ?」

「どこがよ!」

「だって梵がそれだけ美夜ちゃんに夢中だって分かればしつこい奴らでも無理に自分とこの娘を送り込んでも寵愛は得られないって諦めるやつも出てくるじゃん。実際数人ほどそう考えて梵に打診するの止めた奴がいるらしいし」

「でも結局得するのは政宗じゃん」


私は政宗といちゃつきまくってるってお城に居る人達以外からも思われちゃうのに。私だけ損な気がする。


「それはそうだけど、ちゃんと美夜ちゃんのことも考えてると思うよ?」

「はぁ? どこがよ」

「梵の断り方はあくまで自分が美夜ちゃんに惚れ込んでる、って言い方だろ?」

「うん。でもそれがなに?」

「例えば美夜ちゃんが梵に他の女に会うなって言ってるから、って断り方したら聞いた相手は美夜ちゃんは我が儘で城主の行動を振り回すとんでもない悪女だって印象を持つと思わない?」

「思う、かも」

「だろ? だから梵は美夜ちゃんが悪く思われない言い方を選んでるんだよ」


面白くない。そんなことを知っちゃったら政宗のこと怒れなくなる。


「でもさ、そんなに私と政宗の仲が良いって思わせといて大丈夫なの?」

「なにが?」

「だって私はいつか元の世界に帰るんだよ? そのあとどうするの?」

「美夜ちゃんが病気とかで死んだってことにでもするんじゃない? 死んだ相手と婚姻なんて無理だし死んだことにするほうがいろいろと楽だしね」

「聞かなきゃ良かった……」

「なんで?」

「本当は生きてるのに死んだことにされるなんてなんか存在を否定されてるみたいじゃん」

「言われてみれば。なら梵は別のごまかし方考えるよ」

「なんでそんなに言い切れるの?」

「そう思うから。さってと、喉渇いたからお茶貰ってくるよ。美夜ちゃんの分も貰ってきてあげるね」

「……ありがとう」


わざと話を打ち切られた気がする。お茶を貰いに行く成実さんを見送りながらそう思った。



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