この蒼い空の下で

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小十郎さんが止めてくれたおかげでキスせずに済んだ。戻った時にはしろよとか言われたけど誰がするか! こんな時までセクハラするなってのよ!

引かれてきた自分の馬の元に向かう政宗の背中を睨む。ふと、何かが気になった。なんだか違和感みたいなものが・・・。

なんだろと政宗の全身を上から下まで見て行って、気付いた。


「あの、綱元さん。政宗はなんであんなに刀を下げてるんですか?」

「殿は六爪流の使い手でもあるからですよ」

「ろくそう?」

「六本の爪と書いて六爪、です」


爪? 爪って、爪だよね? 思わず自分の指先を見る。刀を爪に見立ててるってことだよね? でも二本しか持てないのになんで見立てることが出来るわけ?


「指と指の間に柄を挟むんですよ」


私が不思議に思ってることに気付いた綱元さんが、自分の手の平を広げて指差しながら教えてくれた。

指と指の間に挟む? そりゃ政宗は手が大きいから挟むことは出来るだろうけど、固定することは出来ないんじゃないの? 振るってもすぐに外れちゃう・・・。

そういえば政宗って握力凄かったっけ。最近は無いけど出会ったばっかの時はマジで頭蓋骨を握力だけで割られると何度も思ったもん。

政宗は握力測定器使っても壊れて測定不能になりそう。う〜ん、なんかだんだん政宗のあの握力なら指と指の間に挟んでも難無く扱えそうな気がしてきたぞ。それにしても、


「政宗って凄いんですね」

「我等の殿ですから当然です」


誇らしげに即答された。政宗って側近からも一般の兵士さんからもみんなから慕われてるんだなぁ。

馬に跨がった政宗の横顔が眩しく見えた。ついさっきまで私にキスしようとしてくるセクハラ野郎だったのに。

前にもあんな政宗を見たことある気がした。いつだったっけと記憶を探る。

ああ、あの時だ。天下を目指すと言った時も、今みたいに眩しかった。

ふとこっちを向いた政宗と目が合った。浮かべた笑みになぜかドキドキして視線を逸らして俯く。心なしか頬が熱い。落ち着けと何度も言い聞かせながら、そういえばずっとあった不安が小さくなってることに気付いた。

いつからだっけと考えて、政宗と言い合いをしている時は不安を感じることすら無かったと思い出す。もしかして、こんな時にまでセクハラしてきたのはわざと? 私の不安を和らげるためにいつもと変わらない態度を取ったの?

兵士さん達に号令をかける政宗の姿を見ながら複雑な気分になる。意地悪は優しさから、なんて怒るに怒れないじゃない。



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