この蒼い空の下で
□14
8ページ/8ページ
「ああ、忘れるところだった」
「今度はなに?」
「これだ。用は済んだから返しておく」
そういって政宗が取り出したのは布の包み。何重にも巻かれていたのは前に貸したお守りの石が入った巾着袋だった。
「なんでこんなに布で巻いてたの?」
「それくらいしねえとまともに触れねえんだよ」
「私はなんともないんだけどなぁ」
袋から出して手の平の上で転がしてみてもやっぱりなんともない。どうして私だけ平気なんだろう。私の持ち物だから?
「そういえばなんで借りてったの?」
「お前なぁ、普通そういうことは貸す時に聞くことだろ」
「忘れてたんだもん」
「大切なものなんじゃねえのかよ」
「大切だよ。でも政宗なら良いかなって思ったんだもん」
そう言ったら政宗は少し目を見開いたあとに苦笑してなぜかぐしゃぐしゃと私の頭を撫でてきた。
「It is a mysterious woman.」
「え? なに? なんて言ったのか聞こえなかったんだけど」
「なんでもねえよ。それより、貸りた理由が知りたいんじゃなかったのか?」
声が小さくて聞き取れなかったから聞いたのに政宗は答えてくれなかった。ごまかされたような気もしたけど知りたいことだったし追求しても教えてくれそうになかったから頷いた。
「なんでお前以外が触ると痺れるのか原因を調べるために借りたんだ」
「分かったの?」
「原因と言うには少し違うがな。お前はその石はお守りだって言ってただろ? なら寺社関係だろうと思って名の知られた奴に見せに行ったんだが、どいつも同じことを言ったらしい」
「どんなこと?」
「『神仏の篤き加護を秘めている』だとよ」
「神仏の加護?」
まじまじと石を見てみるけどよく分からない。私には普通の石に見える。でも偉い人が言ったのならそうなのかな? だけど、どうしてそんな石を私が持ってるんだろう。
「出来る限り肌身離さず持っていた方が良いらしい」
「そうなの? なにか良いことがあるのかな? それとも何かから守ってくれるとかかな?」
「さぁな。俺は神だの仏だのそういったものは信じてねえからな」
「私も熱心な信者ってわけじゃないけど……」
蝋燭の明かりを受けて赤く光る石はどこか神秘的にも見えて、神仏の加護があるというのもあながち間違ってないような気がした。
続
It is a mysterious woman.
訳→不思議な女だな
.