この蒼い空の下で

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手の平の上で石を転がす。何となく、だけど、政宗に貸すのだけは平気な気がした。


「いいよ、貸してあげる。政宗なら大事に扱ってくれると思うし。でも出来れば早く返してほしいな」

「Thank. 安心しろ。数日中には返す」

「うん」


石を巾着袋に戻してから渡した。政宗はそれを懐に入れると、もう用は済んだのか成実さんを促して立ち上がった。二人が帰るならと出した物を箱の中に戻していたら政宗に頭を撫でられた。


「なに?」

「撫でてほしいんだろ?」


ニヤリと笑った政宗に最初何を言われたのか分からなくてきょとんとなった。でも直ぐに一気に顔が熱くなる。


「聞いてたの!?」

「可愛がってほしくなったらいつでも来い」

「行かないわよ!」


くつくつ笑いながら出て行く政宗の頭目掛けて携帯を投げ付けたけど振り向くことなくキャッチされてしまった。ちくしょう!


「笑い堪えるのが大変だったくらい悶えてる美夜ちゃんの姿は最高に面白かったよ!」

「面白くない!」


成実さんは親指を立てながら言うと何かされる前にとさっさと出て行きやがった。閉められた障子の向こうからは思い出し笑いをしてるのか笑い声が聞こえてきて余計に腹が立つ! 安心していたとこに時間差で言ってくるなんて質が悪いわよ! 見られた後直にぐ言われるよりずっと恥ずかしいんだからね!!


―――――


袋に入ったままでさえ僅かだがピリピリと痺れる。だが攻撃というよりは拒絶や牽制のように感じる。持ち主以外は触るなということか?


「政宗様、お呼びと伺いましたが」

「ああ。これを触ってみろ」


小十郎に石の入った袋を渡す。僅かに眉をしかめ、中身を手の平に取り出すと眉間の皺が深くなった。


「これは……」

「私もよろしいですか?」


小十郎の手から綱元が石を摘み上げようとするが、すぐに離し己の手を見た。


「殿の持ち物、ですか?」

「NO、俺じゃなくて美夜のものだ。守り石らしい」

「では美夜さんは殿や小十郎と同じ婆裟羅者なのですか?」

「いや、違うだろう。これは属性のものとは少し違う。攻撃の意志を感じねえ」

「俺も同じ意見だ。それに、美夜は触れても何も感じないらしい。他者が触れればそうなることを知らなかったようだ」

「美夜さんはこれをどちらで?」

「いつからかはっきりとは覚えていないらしい。覚えていないほどガキの頃に誰かにもらったのかもしれないとは言ってたがな」

「それはまた、なんとも不思議な話ですね」


石を返した後、小十郎は手を握ったり開いたりを繰り返している。俺と同じで手の平に長く置いていたために痺れが残っているのだろう。


「神仏関係で名の知られた奴を知らねえか?」

「少し前に北山の寺に徳の高い僧侶が滞在していたとか。今もまだ居られるのかは分かりませんが」

「私の方はこちらに戻る途上である神社に御利益のある札を作るとかで付近では名が知られた男がいるという話を聞きました」


小十郎と綱元、それぞれの意見を聞いてから忍を呼ぶ。袋の上からさらに布で包んだ石を渡し、件の寺と神社に行き石について調べてくるよう命じた。



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