この蒼い空の下で
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木陰に下ろされて、小十郎さんが濡らしてきてくれた手拭いを目元に当てて横になる。政宗と小十郎さんは畑の方へ行って何か話してるのか微かに声が聞こえてくる。側には成実さんがいるだけ。
「ぅえ」
「大丈夫?」
「うっさい黙れ馬鹿」
「酷いなぁ。ちょーっとうっかりして梵の馬に乗せたままにしちゃっただけじゃん」
「何がうっかりよ。あんたはうっかり八兵衛か」
「誰それ」
「うっかりしまくる八兵衛さんよ」
「よく分かんねえけどとりあえず俺はうっかりしまくったりしないから」
「うっかり成実さん」
「だから違うって。そんなマヌケなあだ名はやめてよー」
べー! と舌を出して起き上がる。うん、だいぶマシになってきた。まだちょっと気持ち悪いけどリバースしそうなほどじゃない。濡らした冷たい手拭いと近くを流れる小川からの涼風のおかげだね。
小十郎さんと政宗は離れた位置で実った野菜を指差したりしながらまだお話中。そして気になってた小十郎さんの姿は普段と違って動きやそうな格好で、頭には手拭いを巻いて邪魔にならないように袖を折って捲っていた。そして側には鍬が置いてある。
想像した時は似合わないと思ったけど、実際に見てみたらなんていうのかな。しっくりくる、かも? 畑に居慣れてるというか、違和感が全然無い。
「ほんとに野菜作りが趣味なんだ」
「やっと信じた?」
「一応。ねえ、小十郎さんが一人で世話してるの?」
「まさか。さすがに小十郎だけじゃ無理だから近くの農村から人手を雇ってるみたいだよ。戦の時なんかは世話出来ないしね」
「そんなに広いの?」
「あそこと向こうに細い道があるの分かる?」
成実さんの指が私達のちょうど正面の少し遠くにある細い道と、右手の方にある森へと続く道と言うより歩きやすいように草を刈っただけの場所を指差した。小十郎さんの畑は緩い斜面になってるからよく見えたから頷く。
「小十郎の畑はこの小川と森とあの二つの細い道に挟まれた土地全てなんだよ」
成実さんの指が、すぐ側を流れる小川と、私達が座ってる場所のすぐ背後の森、そして最初に言った二つの道を順に指差した。
広さは校庭一つ分…二つ分まではないかな。でも農作業用の機械も無いのに一人で世話するには広すぎるよね、これ。てかもう趣味の域越えてない? 農家って言ってもいいんじゃないの? 小十郎さん、その姿からは予想も付かない趣味をお持ちなんですね。びっくり過ぎてびっくり顔にもならないよ。
「ちなみに小十郎の作った野菜は絶品でね、基本的には城内の人間か雇ってる村人くらいしか食べることが出来ないから幻の野菜なんて言われてるんだよ」
「幻!?」
小十郎さんってばどこまで野菜作りの腕前を極めてるわけ!!?
続