この蒼い空の下で
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衣食住の保証と帰る方法を探すのと引き換えに未来のことを話す。それって良いこと?
そういえば、昔読んだ小説だったか漫画だったかで過去に飛んで歴史を変えようとしたら巡り巡って自分が生まれないことになって消滅しちゃった、っていうのがあった。アンハッピーエンドな終わり方だったから当時は衝撃的だった。
「例えば、だけどさ。未来の何が知りたいの?」
「歴史を知りたいかどうか、か?」
政宗様はニヤリと笑った。こくっと頷く。やっぱり政宗様は私が聞きたいことを聞く前から分かっていたみたい。
「安心しろ。俺が知りたいのは歴史じゃねえ。未来がどんな世界になってるか、だ。例えばそれがどんなものなのかとかな」
それ、と政宗様が指差したのは私の膝。というかたぶん携帯だと思う。そういうことだったら話しても大丈夫、かな? 歴史じゃないなら大丈夫だよね?
「分かった。さっきの条件で良いよ。でもなんで私が思ってることが分かったの?」
「これは過去に飛んだ男が歴史を変えて自らがKingになろうとして破滅する話なんだよ」
横に置いていたさっきの本を持ち上げながらそう言った。私が読んだ本と似たような内容だってことなんだろう。
「さてと、話はこれで終わりだ。今日はもう休め。小十郎、こいつの部屋を用意してやれ」
「承知致しました」
こじゅうろうさんは主人の言うことにはどんなことであっても絶対に逆らわない、という感じはしないから、私が着替えてた間にでももう二人の間で既に話が済んでいたのかもしれない。ボソボソと小声での話し声が聞こえてきてたし。
「ん?」
部屋を出ていくこじゅうろうさんの背中を見ていたら、何かが引っ掛かった。
「どうした」
「なんか、変?」
「お前の頭がか」
「違うわよ!」
手帳をぶん投げたけどあっさりとキャッチしやがった。顔面狙ったのに!!
「あ! それだ!」
政宗様(なんか様付けしたくなくなってきた。)を睨んだおかげ? でもやもやしたものの正体がやっと分かった。
「政宗…様、」
「政宗でいい」
「じゃあ政宗で。あのね、私がしたのタイムスリップじゃないかも」
「どういうことだ」
「だってあんたもこじゅうろうさんも森であんたを呼びに来た人も髷を結ってないんだもん。それにこじゅうろうさんの服だって戦国時代にしては形がちょっと変だし、歴史番組はたくさん見たことあるけど伊達政宗が流暢な英語喋ってたなんて聞いた記憶ないんだもん」
私の言ったことに政宗も眉間に皺を寄せた。ここが戦国の世なのは間違いないと思う。だって政宗が居るし。でも私が知ってる戦国時代の知識と照らし合わせると変な点が幾つもある。なら、ここはいったいどこ?
「パラレルワールド、ってやつかな?」
「Parallel Worldだと?」
「そう! もしあの時この道を選んでいたら、って時あるでしょ? ここはきっとそーゆー選択肢の一つの世界……あーでもリーゼントはオカシイか。んー……」
「Another World」
「え?」
「Parallel Worldじゃなく、Another Worldならどうだ」
「アナザーワールド? えぇと……もう一つの世界ってこと?」
「Yes, Anotherには『別の、よく似た』って意味もあるからな」
「そか。なら確かにアナザーワールドかも」
パラレルワールドよりこっちの方がしっくりくるかも。そっか。アナザーワールドか。でもこれってタイムスリップよりも凄いことなんじゃないの? うっわー! 私超レアな体験しちゃってるじゃん! すっごーい! と興奮しながらふと見た政宗が一瞬だけ何かを企むようにニヤリと笑ったように見えた。けど、そんな笑い方するようなことなんか起きてないからきっと気のせい、だよね?
続