この蒼い空の下で

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お館様にありがとうございますと頭を下げてから幸村と佐助の後に着いて部屋を出た。ごしごしと袖で目元を拭っていたら目の前に手ぬぐいが差し出された。手の持ち主は佐助だ。


「そんなに警戒心剥き出しにしなくても普通の手ぬぐいだし深い意味は無いよ」

「・・・・・・ありがと」


意外な行動に思えて、さっさと歩き出した佐助の後に着いて行くのが遅れた。けど、幸村は私に合わせて歩いてくれてるから置いていかれる心配は無い。並んで歩いてたら話し掛けられた。


「美夜殿、佐助を誤解しないではもらえぬだろうか」

「誤解って?」

「佐助は美夜殿に酷いことをしたのだろう。だがそれは佐助が忍だからなのだ。主を守るために常にあらゆることに警戒する。それが忍だ。だから決して美夜殿を嫌っての行動ではない」


そういえばお守りのことも得体の知れないものを渡せない、みたいなこと言ってたっけ。


「分かった。その辺のことは私も我慢するように頑張るよ。でも着物脱がせたり胸元を触りまくったこととか別だから」

「ぬ、ぬぬぬ脱がせた!?」


幸村の顔が月明かりでも分かるほど真っ赤になった。


「山で幸村は佐助は何処にいるか叫んでたでしょ? あの時に触ってきてたの。何かを確認するためだったっぽいけど無理矢理を着物脱がせて女の子の胸元を遠慮無く触ったことは絶対に許せないから。止めてって言っても全然聞いてくれなかったし!」


思い出したらまたムカついてきた。佐助は視界に入る場所に居ないしと変態とかセクハラ野郎とか心の中で言っていたら幸村が隣に居ないことに気付いた。いつの間にか立ち止まってたみたい。数メートルほど後ろで拳を握り締めたまま小刻みに震えている。


「幸村?」

「許せぬ! 嫌がる女子に無体を強いるなど断じて許せぬ!」


カッと顔を上げた幸村の迫力に思わず後退。ちょうどその時、私達が着いて来ないことに焦れたらしい佐助が戻ってきた。


「二人とも何立ち話してんの」

「佐助ぇっ!!」

「え!? 何? 旦那ってばなんでそんな怒ってんの!?」

「美夜殿への数々の無礼な振る舞い、許すことは出来ぬ! そこに直れ!」

「は? え? ちょっ、何のこと!?」

「しらばくれるなど男として最低だぞ!」

「だから意味が分かんないって!」


近付く幸村に後退る佐助。私を散々からかって脅して虐めてた佐助なの? ってなくらい冷や汗をダラダラ流して慌てふためいてる。ビデオに残してやりたい!


「旦那落ち着こう! 一旦落ち着こうよ! な!?」

「佐助! 歯を食いしばれぇぇっ!!」

「だから待ってって言、ぐはぁっッ!!」


幸村に頬を殴り飛ばされた佐助は綺麗な放物線を描いて夜空の彼方に飛んでいった。ホームラーン!!


「幸村ー! 手を上げて!」

「む? こ、こうでござるか?」

「そうそう。はいタァーッチ!」


パン! と手を合わせて戸惑う幸村とハイタッチ!


「幸村、ありがと! 気分スッキリだよ! 一回で良いから佐助をぶん殴りたいって思ってたの!」

「そ、そうだったのか?」

「うん! 変わりにやってくれてほんとありがと!」

「なっ!?」

「ん?」


幸村の顔が一瞬で真っ赤になった。そして、


「破廉恥でござるうぅうぅぅぅっ!!」

「っ、ぅ」


叫びながらどこかに走って行っちゃった。声がデカ過ぎて耳がキーンてなった。てか私、両手で手握っただけなんだけど。幸村ってば奥手過ぎるにも程があるよ!



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