この蒼い空の下で

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「あれ? うそ!? 無い!」


いつの間にか置かれてた着替えの着物に袖を通す前にお守りを首に掛けようとしたら、お守りがどこにも見当たらない。お風呂に入る前に着てた着物が無くなってるから一緒に持っていかれちゃったのかも。横に避けておいたのに。

何処にあるのか分からないと認識した途端、入浴の途中からずっと感じてた心細さや不安が強くなった。このままじゃ泣き出してしまいそう。

急いで着替えの着物を着てもたつきながらも自力で帯を結び(奥州に居た頃に教わっておいた)外に出る。


「どしたの? そんなに慌てて」

「佐助!」


戸の脇に居た佐助に駆け寄って腕を掴む。


「お守りが無くなってたの! 侍女さんが間違えて持ってっちゃったのかも! 探すの手伝って!」

「そんなに大切なものなの?」

「大切だよ! あれが無いと私っ・・・」


私は、どうなるの? ハッとなった。無意識に口にしていた言葉。どうしてこんなに大切なんだろう。あれが側に無いと私はどうなるの?


「あ!」


自分で言った言葉に疑問を感じていたら目の前でぷらん、と探していたお守りが揺れた。佐助が紐の先を持っている。


「佐助が持ってたの!?」

「ちょっと気になっててね」

「借りるなら一言言ってよ!」

「言ったら素直に貸した?」


貸した、と言おうとして、でも言えなかった。貸したくない、と思ったからだ。なんで? 政宗には数日間貸してたことだってあるのに。


「と、とにかく返して!」


何処にあるのか分かったことで心細さや不安は薄くなったけど、まだ完全に無くなったわけじゃない。早く手元に取り戻したくて手を出すけれど、佐助は紐をくるくると指に巻くと腕をさらに高く上げてしまった。爪先立ちしてもぴょんぴょん跳びはねても全然届かない。


「なんで返してくれないのよ!」

「そんなに返してほしい?」

「当たり前でしょ!」

「だったら美夜ちゃんのことを正直に話してくれる? 何処から来たのか。なぜ竜の旦那の許嫁のふりをすることになったのか。山で言ってた『元の世界』がどういう意味なのか。全て正直に話したら返してあげる」

「嫌って言ったら?」

「激流の流れる谷底に捨てた物を見つけるのは不可能だよね。しかもこんな小さな物なら尚更。それとも砕いちゃおうか」

「やめて!!」


焦って佐助の肩を掴んで限界まで踵を上げて手を伸ばした。だけど佐助も身長が高いからやっぱり届かない。

捨てられるわけにはいかない。捨てられたら私は・・・。

その先はさっきと同じで出てこなかったけど、手放したらいけないことだけははっきりしてる。

政宗、ごめん。約束破っちゃう。お守りは絶対に取り戻したい、ううん。取り戻さなきゃいけないって思うの。

だから、ごめん。



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