この蒼い空の下で
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あっという間に幸村に追いついた。佐助って実は凄いのかも。だって漫画とかアニメの中だけだと思ってた、静かに素早く枝から枝に移動するのをさくっとやっちゃったんだもん。バックで発進する安全バーの無いジェットコースターみたいでものすっごく怖かったけど!!
「美夜殿、本当に申し訳ない」
「もういいって。私は気にしてないから。ね?」
麓近くで追いついてから、幸村は私に謝りっぱなし。振り落としちゃったことと、気安く体に触れて申し訳ない、って。お尻はもう痛くないしおんぶくらいどうってことないのに。
幸村ってばすっごい奥手だしピュアみたい。ますます佐助があんなんになっちゃった経緯が気になるよ。
「俺様がなんだって?」
「ぎゃっ!」
麓の村人に預けていた幸村の馬を取りに行っていた佐助がいつの間にか戻って来てて、しかも目の前に居た。心臓が飛び出るかと思った。まだバクバク鳴ってる。
「美夜殿。さ、乗ってくだされ」
「あ、ごめん。私一人じゃ乗れないの」
「そうなのでござるか? では僭越ながら某が・・・」
私の前に立った幸村が腕を伸ばし掛けた所で真っ赤になった。馬に乗せるだけの間でも腰に触れるのは破廉恥、ってとこなんだろーなー。
「さ、佐助!」
「はいはい、変わりにやればいいんでしょ」
やっぱり。どうやったらこんな純粋培養のオトコノコが育つのか不思議過ぎる。
また何かされるかと身構えていたけど佐助は何にもしてくることはなくて、鞍まで持ち上げて座らせてくれた。私がしっかり鞍を掴むと、幸村は手綱を引いて村を出た。夜にはお館様って人のなんとか館に着くんだって。
街道に出てからも幸村は馬に乗ろうとはしない。一緒に乗ったら腕の中に私、もしくは私に後ろから抱き着かれるって状況になるからだろうなぁ。政宗や佐助も幸村のこの奥手っぷりを分けてもらえばいいのに。
・・政宗、今頃どうしてるんだろ。
「美夜殿? 如何致した? 何やら悲しげな顔をしておられるが・・・」
「そ、そんなことないよ! 幸村の気のせいだよ」
「美夜ちゃん、無理してるのバレバレだから。大方竜の旦那のことが気になって仕方ないってとこだろ?」
「そうか。確か伊達殿は今出陣しておられたな」
竜の旦那、ってのは政宗のことだったみたい。二人には私が政宗のとこに居たのがバレちゃってるみたいだし、聞いたら教えてくれるかな? 佐助は情報収集も仕事だって言ってたから知ってるだろうし。
「ねぇ佐助、あのね、」
「戦況が知りたいってとこだろ? 明日まで待ってくれる? 朝には偵察に行かせた部下が戻ってくるだろうから」
「ん、分かった。佐助、ありがと」
「どーいたしまして」
そう言って佐助は慰めるようにぽんぽんと私の膝を叩いた。さっきまで意地悪ばっかりだったのに、今の佐助はなんでか優しかった。向けられた眼差しも優しくて、一人っ子なのにお兄ちゃんに見守られてるような気分になった。
翌朝、幸村と佐助が私に与えられた部屋に来た。約束通り教えに来てくれたのだ。
結果は、伊達軍の勝利。被害も少なく、佐助の部下が遠くから見た限りでは政宗に大きな怪我も無かったらしい。それを聞いたらホッとして、少し泣いてしまった。
続