この蒼い空の下で

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「はぁ・・・あっ」


俯いてトボトボ歩いてたせいでお店から人が出て来るのに気付かずにぶつかってしまった。


「どこ見て歩いてんだよ!」

「ご、ごめんなさい!」


慌てて頭を下げて謝ったけど、よく見たらぶつかったのは私より年下の男の子だった。多分十一・二歳くらいだと思う。

でも、こんな子供の時からちょっとぶつかっちゃっただけであんなに怒るなんて、将来どうなるやら。怒りっぽいと良いことないぞー。


「あ、居た居た。美夜ちゃーん」

「ん? あ、太一さん」


呼び声に振り向くと、太一さんがこっちへ向かって駆けてくる所だった。手には見覚えのある布を持ってる。あれは確か栗きんとんを包んでた風呂敷だ。


「間に合ってよかったよ。はい、これ。忘れ物だよ」

「わざわざすみません」

「気にしないで。頼み事もあったし」

「頼み事? なんですか?」

「あのお菓子の作り方教えてもらえないかなって思って。美味しかったから知り合いのお菓子好きにも食べさせてあげたいんだよ」

「良いですよ。てか作り方簡単だからなんなら今教えますよ?」

「んー・・でも失敗したくないしなぁ・・・。やっぱ作りながら教えてもらってもいい?」

「もちろん良いですよ」

「ありがと。じゃあ明日にでも俺栗拾いに行ってくるからそれ以降に家に来てくれる? 美夜ちゃんの都合の良い日で良いから」

「分かりました」


約束をして改めて太一さんと別れた。いつ行こう。予定なんて何にも無いからいつでも行けるけど、政宗達が戦に行ってる時にふらふら出歩きまくるのもなんか不謹慎な感じするんだよなぁ。かといってあんまり日にち置くと太一さんに悪いし。う〜ん、どうしよ。


「ん?」


視線を感じて周りを見たらたくさんの人が私を見てた。


「名前や歳が同じでも顔があれじゃなぁ。可愛い方だがあの程度じゃ・・・・可哀相に」


なんて聞こえてきた。そうか、太一さんが私の名前を大声で呼んじゃったせいか。注目を浴びちゃってる理由は分かったけど、でもそれとこれとは別だ。

あれってなによ! あの程度ってなによ! すみませんねぇ絶世の美少女じゃなくて! でも私が噂のお姫様なんですけど!? ほんとはお姫様でもないし絶世の美少女じゃないけどそんなの私のせいじゃないじゃない!

イライラする気持ちを足にぶつけて足音荒くお城へと帰った。私の顔を見た門衛の二人が揃って股間を庇ったから更にイラっとした。


「ん?」


開けてもらった通用門を潜ろうとしたら突き刺さるような視線を感じた。振り返って周りを見るけど、居るのは門衛の二人だけだ。門の先をずっと歩けば城下の人達が居るだろうけど、そんな遠くからじゃ私の姿は小さくしか見えないと思う。


「どうしたんすか?」

「今私のこと誰か見てなかった?」

「さっきガキがあそこに居たっすけど」


門衛の一人が指差した方を見ても今は誰も居ない。私が門を潜ろうとした時に角を曲がって行ったらしい。子供と聞いてぶっかった少年が浮かんだ。けど後を着けられる理由が浮かばない。慰謝料の請求しようと後を付けたなんて考えるにはあの子まだ子供だし。

もしあの子ならきっと帰る方向がたまたま同じでぶつかってきた私にまだムカついてたから睨んだとかかな。ガキを探して連れてきやしょうかと息巻く門衛の二人を宥めてから門を潜った。



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