この蒼い空の下で

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体に掛かる重みが僅かに増した。どうやら寝ちまったらしい。半裸のままだってのに。最近は陽が傾けば涼しくなってくる。通り掛かった侍女に袿を持ってこさせ美夜の体を包んだ。

元々baby faceだが、寝顔はさらに幼く見える。痩せちまったせいで細かった体はますます細くなり、本人は喜んでいたが俺からすれば細過ぎて心配でならない。

少し力を込めただけで折れてしまうんじゃないかとさえ思う。sponge cake【カステラ】を気に入っていたようだし、これからは頻繁にsweetを作って食べさせるか。多少体に肉を付けさせねぇと安心出来ねぇ。


「ん・・・」


起きたかと思ったが、寝心地の良いpositionを探して身じろいだだけだったらしい。ずれて肩が見えている袿を掛け直し、壁に背を預ける。

美夜の世界のことじゃなく、美夜自身のことを聞くために滅多に作らねぇsweetを作ってまで会う口実を作った。そこまでして美夜のことを知りたがる自分に対する戸惑いはなかなか消えない。なぜそんなに知りたいのかも解らない。

それに、なんで美夜を抱きしめているだけでこんなに落ち着くのか。細くなった美夜の体に触れていると、こんなに痩せ過ぎて大丈夫なのかと心配になる。が、同時に落ち着きもする。香とは違ったどこか甘く感じる匂いにも安らぎを覚える。

美夜が無防備に寝ていいのは俺の前でだけだ。寝顔を晒していいのも俺にだけ。

そんな思いが無意識に浮かんだ。


「Ha・・何考えてんだ、俺は」


独占欲丸出しじゃねえか。女一人に何考えてんだ。頭を一つ振って思考を切り替える。今考えることはもっと別のことだ。

思いがけず判明した美夜の感情の異変。深夜に美夜の体に起こる異変と何か関係があるのだろうか。

だが、調べようにも情報がなさすぎる。少数の忍にのみ美夜の正体を話し、情報収集のために各地に飛ばしている。が、異なる世界を渡るなどという夢物語のような現象に関する有益な情報は全く入って来ない。この様子では今後も期待は出来ないだろう。

やはり、全ての事柄を解決に導くには美夜の失われた記憶が必要、ということか。だが、無理に思い出させて美夜の身に負担をかけさせたくはない。美夜の身に負担のかからねぇ方法はあればいいが・・・。



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