この蒼い空の下で

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「梵ー、あのおっさんがまた来……こ、今回は仕方ないことだからな! 俺は梵を呼びに来ただけなんだから!」

「チッ。Timingの悪ぃ時に来やがって。マジでうぜぇ野郎だな」

「梵てさ、俺が傷付かないとか思ってないよな? ウザいのってあのおっさんのことだよな?」


面倒臭そうな顔をして政宗が離れた。私からしたらナイスタイミングだよ。顔も知らないおっさんとやらに感謝。ありがとう、おっさん。ついでに成実さんも。


「美夜ちゃん、丸見えなのにいつまで寝てんの? はっ! もしかしてじっくり見ちゃっても良いの!? 梵に傷付けられた俺の心をこれで癒してってこと!?」

「は? うきゃあぁぁぁ!!」


胸丸出しだったー!! 慌てて腕で隠して手近な部屋に駆け込んで戸を閉める。見られた。また見られちゃった! 前は私も悪かったと思うけど今回は百パー政宗のせいだよ! いつか絶対に反撃されない仕返しの方法考えて仕返ししてやるんだから!

グッと拳を握って決意した拍子に政宗に半脱ぎにされたショートパンツがずり落ちた。ノースリーブのワンピースが膝上までを隠しているけど政宗の前では今まで以上に気をつけなきゃ。気をつけてもセクハラされる時はされるだろうけど!


「成実さん、さっきはありがとう。私初めて成実さんに感謝を覚えたよ」

「初めてってとこが気になるけどどういたしまして。にしても今日のせくはらは凄かったみたいだね」

「あの変態野郎ここが廊下だってのに手加減しないんだもん! 本気でヤられるかと思ったよ」

「つーことは俺が梵を呼び行くのをあと少しでも遅くしてたら濡れ場目撃出来たかもしれねえのか。勿体ねえことしたかも」

「なんか言った?」

「なんでもないよー」


なんか怪しい。でも今日ばかりは追求しないであげることした。だってさっきは本当に助かったんだもん。


「美夜ちゃーん、髪紐落ちてるよー」

「あ、ありがとう」


服の乱れがもう無いか確認して、ボサボサの髪を手櫛で直しつつ廊下に出て髪紐を受け取って紙を後ろで一つに縛った。


「ねえ、さっき政宗を呼びに来た時に『またあのおっさん』って言ってたよね? そんなにその人しょっちゅう来るの? 政宗もすんごい嫌な顔してたし」

「しつこい連中の中では断トツのおっさんなんだよ」

「何がしつこいの?」

「娘の売り込み」

「は?」

「美夜ちゃんの存在のおかげであからさまにはしてこなくなったけど、代わりに茶会だのなんだのを開いて梵を招待しようとしてるんだってさ」

「ああ、自分の娘を政宗の奥さんにって、やつね」

「そ。梵を招待してその場に娘を連れて来たりとか、なんとかして自分の娘や一族の娘を梵に引き合わせようと必死なわけよ。まあ毎回梵に断られて一度も成功してないんだけど……」

「な、なに?」


私を見たかと思ったら面白いもの見つけちゃった、って顔をした成実を警戒する。こんな顔するってことは私からしたら絶対に面白くないことに決まってるもん。


「ねえ美夜ちゃん。梵は招待を断る時に毎回同じこと言ってるらしいんだけど、なんて言ってると思う?」

「知らないわよ、そんなの」

「あいつの側を離れたくねえ」

「……は?」

「美夜ちゃんの側を離れたくないから行かないって断ってるんだって。んで向こうがそれでしたら許婚の姫もご一緒に、って言うと他の野郎の目に触れさせたくねえって言ってるらしいよ」


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