この蒼い空の下で
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「ん……」
「お気がつかれましたか?」
起きると枕元で侍女さんが扇子で風を送ってくれていた。夏で暑いとはいえこんなことは初めてでなんで今夜に限ってと侍女さんを見つめているうちに眠る前のことを思い出した。寝てる間ずっと扇いでてくれていたらしい侍女さんにお礼を言って、念のためにゆっくり体を起こす。特にふらつくことも無く起きられた。もう大丈夫みたい。外は薄暗いからたくさん寝たおかげかも。
「美夜様、どうぞ」
「ありがとう」
差し出された湯飲みを受け取ると中にはお水が入っていた。明日からは気を付けないとと思いながら水を飲む。少し生温いなと思って、その生温さが喉を伝い落ちていく感触に眠る直前のことを思い出した。
「まさかね。無いって、うん。無い無い」
「何が無いんだ?」
「ふぉあ!」
びっくりしてバクバク鳴る心臓を押さえながら振り向くと襖を開けたままの格好で立つ政宗が居た。どうやら私は執務室の隣の部屋で寝ていたみたい。
視界の端で侍女さんが出ていくのが見えた。二人きりにしてほしくなくて視線で助けてと訴えたのに、にこりと優しい笑みを浮かべて行っちゃった。変な気を使わないで!
「もう大丈夫そうだな」
「あ、ああ、うん。もう大丈夫……」
政宗の顔が見れなくて俯きながら話していたのに側に来た政宗に顎を取られて無理矢理顔を上げさせられた。気にしないでいようと思えば思うほど政宗の唇を見てしまって顔が熱くなってくる。政宗が楽しそうに意地の悪い笑みを浮かべた。
「覚えてるみたいだな」
「おおお覚えてない! あれはキスじゃないもん! あれは、あれは、」
「口移し、だろ?」
「く! か、あ……ふぁぁーっ!!」
恥ずかしいーっ!! 恥ずかし過ぎるよ! だってあれ私のファーストキスだよ!? 初めてがあんななんて良い思い出とは程遠いじゃん! ち、違う! あれはキスじゃない! キスじゃなくて口移し! 口移しぃっ!?
「クッ、HAHAHA!」
「まだ居たの!?」
悶えてるところ見られた!! 私最近恥ずかしい姿見られてばっかりじゃん!
「だから夏って嫌いなのよ!」
「こっちは楽しめるがな」
「私は楽しく無い!」
「だったらお前の居た世界の服に似せたものを作るか?」
「え?」
「楽しめるのは良いがまた倒れられても困るからな」
「私も嫌だ。もうアレは嫌。あんな恥ずかしいこと」
「もっとと自分からせがんだくせにか?」
「政宗の意地悪! 人がせっかく忘れようとしてたのにーっ!」
頭を抱えて唸る私を見て政宗がまた笑った。なんか、しばらくこのネタでからかわれそうな気がするよ……。
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