この蒼い空の下で 参

□Birthday
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政宗が突然立ち上がった。どうしたのかと思ったらなんと袴の紐に手を掛け解き出した。


「ちょっ! な、何してっ!」

「着替えるからに決まってんだろ」


そう言った政宗にプレゼントした着物を渡された。手伝えということなんだろうと着せやすいように政宗の後ろに移動して襟を持って待つ。けど、着ていた着物を脱いで露わになった背中にドキドキして視線を逸らしてしまう。

政宗が鍛練後に水を浴びているのを何度か見たことあるから裸を見るのは初めてじゃないのに、なんで。


「美夜?」

「な、何でも無い」


肌を見てしまわないよう視線を逸らしたまま政宗の腕に袖を通していく。それでも多少は視界に入ってくるからドキドキし過ぎて指先が震えてしまう。

何とか両袖を通し終わり、帯を渡すとようやくホッと出来た。


「どう? 変なとこ無い?」


内緒で作っていたから仮縫いの時に試着してもらっていないこともあってそう聞きながら政宗の正面に回った途端、頬にキスされた。


「all right. 中々の出来じゃねぇか」

「こ、言葉だけで良いの!」


キスされた場所を抑えながら睨むけど、政宗が嬉しそうに笑ってるのを見て今夜は許してあげることにした。

御膳の前に座り直して政宗の杯にお酒を注ぐ。飲みながらも嬉しそうに着物を見るから嬉しい半面気恥ずかしい。


「あ、あんまり見なくていいから。縫い目とか、素人丸出しだし・・・」

「そんなことねぇだろ。素人にしちゃあ整った縫い目だ」


お世辞でも嬉しいけど、政宗はお世辞なんて良いそうにないから多分本音かもしれないと思うともっと嬉しくなった。いっぱい練習して綺麗に縫えるようになったらまた作ろうかなって思った。


「なに?」


何杯目かのお酒を飲んだ政宗がふいに私を見てきた。かと思うとニヤリと笑った。逃げたいけれど正座しているから足が少し痺れてきている。


「美夜、ちっと試してみねぇか?」

「な、何を?」

「お前が酔うかどうかをだ」

「は?」


お酒なんて私は絶対飲まないし、風通しの良い縁では鼻を近付けない限りは匂いで酔うことも無い。いったい何を試す気なんだと警戒するけど、政宗はただ私の方へ空の杯を持った手を差し出してきただけ。

まさか口移しする気かと片手で口を抑えてから政宗の持つ杯にお酒を注ぐ。だけど政宗は無理矢理手を外そうとしてくることは無く自分でお酒を飲んだ。

それでも警戒を解かずに二杯目を注ぐ。これも政宗は普通に飲んだ。次も、その次も同じ。

口移しじゃないみたいだととりあえず口から手を離した途端、政宗に手を掴まれ引き寄せられた。警戒を解くのが早過ぎたと後悔した時にはもうキスされていた。


「んっ・・・ん?」


舌を入れられ、でもお酒は入れられなかった。ただキスしたかっただけ? と思って、直ぐに違うことに気付いて渾身の力で政宗の体を突き飛ばした。

だけど痺れた足では立てなくて、バランスを崩して倒れた所を抑え込まれてしまった。抵抗しようにも手は頭上で一纏めにされ顎も固定されてしまった。


「ん、ぅ・・・や、め・・っ」


舌を絡め取られ翻弄され、宴の席でも結構な量を飲んでいたために濃い酒気を含んだ政宗の呼気が私へと流れ込んできた。


「・・やっぱり、Kissでも酔ったか」

「残念でした。私酔ってないから」


誇った笑みを浮かべる政宗にふふんと笑い返しながら政宗の体を押し退け起き上がる。いつの間にか手は自由になっているのに気付いた。足ももう痺れてない。でも逃げる気が起きない。というか、何で逃げなきゃならないの?

政宗にキスされるのは嫌じゃないのに。


「なんで逃げなきゃって思ったんだろ」

「さぁな。それより、俺を満足させろ。あれだけじゃ全然足りねぇ」


顎に添えられた手でくいっと軽く上向かされた。甘さと熱を多分に含んだ視線で見つめられ、その熱が移ったかのように頬が熱くなってくる。


「誰も、来ない?」

「呼ばない限りは絶対に来ねぇよ。心配なら移るか?」


視線で直ぐ横の室内を示され、頷いて政宗の首に腕を回した。横抱きに抱き上げられ室内へと運ばれる。

なんだか私自身もプレゼントになっちゃったみたい。

翌朝、政宗の腕の中で眼を覚まし、驚きと恥ずかしさに叫びかけた所をキスで阻止されついでとばかりに眼を回すまで濃厚なキスをされることになるとも知らずにそんな呑気なことを思った。



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