この蒼い空の下で 弐
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成実さんにお礼を言って二人と別れたんだけど、政宗へのプレゼントに困ってしまった。私はこの世界のお金を持っていない。だから何かを買うことが出来ない。
ならばとお昼ご飯を作ろうと思ったけど、これも断念した。小十郎さんにお願いすれば野菜は分けてもらえるだろうけど、作る場所が無い。
台所を見に行ったらまだお昼までには少し時間があるのに、みんな忙しく動いていた。城内で働く人の数を考えたら当たり前のことだった。
こんなに忙しいのに竃の使い方を聞いたり台所の一角を借りるのは気が引けた。夕飯を作ろうかとも考えたけど、みんなが作る量は変わらないから当然忙しさも変わらない。失敗もするかもしれないことを考えたら邪魔をしちゃうわけにはいかなかった。
「どうしよ」
トボトボと歩きながら考えるけど、お金も掛からず誰にも迷惑を掛けないプレゼントが浮かばない。肩叩きとかマッサージは親や祖父母にやるイメージがあるからどうにも選びにくい。
「ぶつかるぞ」
肩に手を置かれて顔を上げたらすぐ目の前に小十郎が居た。
「小十郎さん・・」
「どうした? 随分と元気が無いな」
小十郎さんなら何か良い案を教えてくれるかも。そう思って政宗に誕生日プレゼントを貰ったことからのことを話した。
「なるほど、そういうことか」
「何か良い案ありますか?」
「そうだな・・」
「小十郎!」
小十郎さんが顎に手を当てて考え始めた時、その後ろから政宗の声が聞こえた。今まで小十郎さんの体で私のことは見えなかったらしく、小十郎さんが体ごと振り向きつつ横にずれたことで私が見えた政宗は驚いたのか軽く眼を見開いた。
「美夜も居たのか」
「うん」
「何を話してたんだ?」
「ん、まあ、ちょっと。それより小十郎さんに用があるんでしょ?」
政宗が手に書類らしき紙を持っていたから、一歩下がることで政宗の用を済ませてと伝えた。
多少訝りながらも「Thank」と言った政宗は持っていた書類を小十郎さんに渡し、二人は二言三言話すと小十郎さんは政宗に一礼して去っていった。私の横を通り過ぎる時に、「政宗様に希望をお聞きするのも手だぞ」と囁いて行った。
確かに政宗に聞けば間違いは無いけど、それじゃあサプライズにならない。私も政宗を驚かせたいのに。どうしたら良いんだろうと悩んでいたら手を引かれた。
「政宗?」
「ずっと外に居たら風邪引くだろ」
そう言われたことで冬の冷たい空気を意識して、ぶるっと体が震えた。部屋を飛び出した後はずっと外に居たから指先まで冷たくなってしまっている。
でも、今は政宗の手に包み込まれているからじんわりと温まっていく。政宗の温もりを分けてもらっているみたい。
そんな風に思ってしまったせいで冷たい空気が気持ちよく感じるほど顔が熱くなってしまった。
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