この蒼い空の下で
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「神様はね、私に一つの石をくれたの」
「もしかして、美夜の持つ守り石のことか?」
「ええ。石には神様の力を込めてあるらしくてね、石に私の魂を宿らせることで、時が来れば自由に扱えるようになると言われたわ。無限にというわけじゃないみたいだけど」
「なんで神はそこまであんたに手を貸したんだ? 正直、強く願ったからってだけじゃどうも納得出来ねぇ」
「私もそう思ったから聞いたわ。でも気まぐれだと言われたの」
「気まぐれ?」
「信じられないでしょうけど本当なのよ。古くてぼろくて、訪れる人もほとんど居なくなった神社に世代を越えて来続けていたのは私達家族くらいだったらしいの。だから気まぐれを起こして手を貸すことにしたんですって。淋しがり屋の神様だったのかもしれないわね」
ふと、神社に参る美夜の姿が浮かんだ。ささやかな願い事を真剣にお願いしたり、何もせずにぼぉっと過ごしたり、たまには掃除もして・・・。そんな姿が容易に浮かぶのも美夜らしいと思った。
そして彼女も、美夜の親なら彼女が子供の時も似た感じだったのかもしれない。
そう考えると、美夜親子なら神すら引き付けてしまったと聞いても不思議と納得出来た。世の中には稀に神に愛されたと言われる人物が居る。美夜達もその類なのかもしれない。
「美夜が石を持つようになったのはなんでだ。最初はあんたに渡されたんだろう?」
「私が石に宿った後、神様が娘の元に送ってくれたのよ。私が娘を側で見守りたいと願ったからだと思うわ。ついでに美夜の意識を少し弄って、石はとても大切なものだいう意識を植え付けてくれたみたい」
「あいつが石をいつから持っていたのか覚えていなかったのはなんでだ」
「あの子は私の葬儀の時の記憶が曖昧みたいなの。だからいつの間にか石を持ってたことも気にしてなかったし、覚えていないからいつからか持っていたと思うようになったんじゃないかしら・・・」
ふいに彼女はあらぬ方を向いた。ここから美夜を見守っていたと言っていたから、俺には乳白色が広がっているとしか見えない光景も、彼女には違うものが見えているのかもしれない。
「外で何かあったのか?」
「片倉さんが来たのよ。あなたを探してたみたいね。倒れてるのを見て驚いてたけど、何かを察したみたいで騒ぎにはせず、あなたが起きるのを傍らで待つことにしたみたい。さすがね」
「戻るにはどうしたらいい」
「私はあなたの精神だけをここへ引き込んだんだんだけど、石の中という特殊な空間に引き込むために体から無理矢理精神を引っ張り出したようなものなの。だけど戻る時は自分の体に戻るだけだから、あなたが戻りたいと強く思うだけで大丈夫のはずよ。戻る?」
「・・・いや、後にする。一通り話を聞いておきたい」
つかの間考えそう答えた。小十郎には心配させているだろうが後で説明すれば良いだろう。
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