Other Story
□目が覚めて…
1ページ/2ページ
浮上する意識
ゆっくりと開いた瞳
写り込んだ部屋の見慣れた天井に
不意に涙が零れた
どうして涙が零れたのか
訳がわからず混乱して
理由をさがす
そういえば
長い長い夢を見ていた気もするが
何一つ思い出せない
思い出せない喪失感に
また一つ涙が零れた
何か
大切な何かを
俺は忘れている
布団から抜け出し
冷えた床に足を降ろし
そっとカーテンに手をかける
開けた視界は
美しい青
心は全てを失った子供のように
只呆然と青い空を眺める
自分が今まで生きてきた世は
もっと鮮烈で
もっと激情的な色ではなかったか
もっと残虐的で
けれど優しく暖かくはなかったか…
不意に蘇る声
――は泣かない
鮮烈で激情的で残虐的な世界で
同じ色を纏うのに
優しく暖かな
誰かが
そう言っていた…
世界は
そう
赤かった
END?