Other Story
□昔日の夏
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初めてアノ人に出会ったのは一年の時の暑い暑い夏の日だった
確か花本先生と話していたと思う
大きく身振り手振りを交え
子供の様に眼を輝かせ何かを話していた
そうまるで子供が親に向かって自分が見つけた新たな発見を精一杯伝えようとするように…
そうやって身振り手振りする様子をみて俺はただただ“変な人”だと思った
「あぁ真山か、居たなら声かけりゃいいのに」
どれくらいそうしていたのか
花本先生が教室の入り口でつっ立っていた俺に気付いて声をかけてくれた
先生の呼びけで俺の存在に気付いた彼は俺を見て“へらっ”と笑って見せた
「こいつは彫刻科3年森田忍、お前さんの先輩だよ」
花本先生がそういって彼を指さした
森田忍…何処かで聞いた名前だと思ったけれど思いだせなかった
喉元まで来ているのに出そうで出ない記憶がどうにも気持ち悪い
けれど自分の名前くらいは返さ無くては、と俺は喉から声を絞り出そうとした