リクエスト小説

□ぶつかる言葉、つながる心
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「ギロロのばかぁ!」

「ば、ばかとは何だ!」

何やら二人の怒った声が家中に響く。その声は夏美の部屋から聞こえてくるようだった。

「ばかだからばかだって言うのよ!」

「夏美のわからず屋!」

「な、何ですって〜!もうギロロなんか・・知らない!」

「お、俺だって・・夏美なんかもう知らん!」

ぷいっとお互いにそっぽを向き合う。

「・・・出てってよ!ここはあたしの部屋なんだから!」

「あ、ああ・・出ていくさ!こんなところ!」

ばんっ

乱暴にドアを開けるとギロロはドタドタと階段を駆け降りていった。

「ドアくらい閉めていきなさいよ!」

その様子を心配して冬樹が部屋を覗き込んだ。

「・・・ね、姉ちゃん・・ギロロと何があったの?」

「ベ、別に・・な、なんでもないわよ・・・」

「でもさっきまで・・・」

「ちょっと一人にさせて・・・冬樹」

「わ、わかった・・」

そういうと冬樹はドアを閉めた。夏美の部屋のテーブルの上にコップや皿、紙箱が置いてあることだけは確認できた。

・・・・・・・・・・

ドタドタ

「ケロッ?」

階段を降りていくとそこにはボケっとしたケロロが立っていた。

「・・・ケロロか・・」

「ギロロ?どうしたでありますか?」

「・・別に・・なんでもない!」

「お、怒ることないでありましょう?」

半ば突き飛ばすようにケロロを振り切ってギロロは自分のテントに帰った。

・・・・・・・・・・

夏美の部屋。

「ギロロのばか・・・」

テーブルの上、中身のない紙箱を見ながらつぶやいた。

(どう考えたってギロロがやったに決まってるじゃない・・・それ以外に誰がいるのよ・・・)

ふとカレンダーを見る夏美。今日のところに夏美と書いてあった。

「・・そうだ・・今日は家事当番だった・・・」

カチャ

夏美は部屋を出ていった。

・・・・・・・・・・

ギロロのテント。

(・・俺だって楽しみにしてたんだ・・・そんなこと絶対にしないのに)

「夏美はわからず屋だ・・」

自分に言い聞かせるようにつぶやくギロロ。

(確かにあれがあるのを知ってたのは俺だけだが・・・だからってそれだけで・・)

んにゃあ?

一緒にいるねこがギロロの顔を覗き込んできた。

「・・お前もそう思うだろ?」

ねこの頭をなでてやるギロロ。

にゃあ・・

うん、といった気がした。

「?・・・おい、口の周りに何かついてるみたいだが・・・」

ねこの毛の色に紛れてわかりにくかったが口の周りにクリームのようなものを付いているようだった。

にゃっ!?

こしこしこし

ねこは驚いた様子でギロロから隠れたところでそれを拭い取った。

(?・・変な奴だな)

そのときギロロはそれくらいにしか思っていなかった。
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