その他小説

□縮まる距離
1ページ/4ページ

オカルト大好き少年、日向冬樹。そんな冬樹に恋い焦がれる少女、西澤桃華。これはそんな二人の物語である。

「冬樹くん、今日は何してるんだろう?」

本日、学校はお休み。冬樹のことを考えるのが日課になっている桃華、そんなとき電話が鳴る。

プルルルル

ガチャ

「もしもし、西澤ですけれども。どなたですか?」

「あっ、冬樹です。西澤さん今時間ある?」

「ふ、冬樹くん!は、はい、ちょうど暇をしていました」

「よかった、近くでミステリースポットを見つけたから、一緒に調査に行こうと思って」

「ぜひ、ご一緒させてください!」

「うん、それじゃ今から西澤さんの家の前に行くから、準備しておいてね」

「はい、わかりました」

「それじゃまた後でね」

ガチャ

(冬樹くんと一緒に過ごせるなんてうれしい、でもどうしようすごく緊張してきましたわ)

冬樹からの電話というだけで桃華の心臓は高鳴っていた。

「ポール、冬樹くんとお出かけしてきます」

「はい、いってらっしゃいませ」

「つけては来ないでくださいね。冬樹くんと二人きりになりたいんです」

ポールは心配して影から見ていようとするからだ。

どきどき

準備をして家の前で待つ桃華、程なくして冬樹が自転車に乗って現れる。

「ふ、ふふ冬樹くん。こんにちは」

「西澤さん、こんにちは。ごめんね、ちょっと遅かった?」

「い、いえ。あたしも今出てきたところです」

「そう、よかった。それじゃ早速行こうか」

「は、はい!」

緊張のあまり少し声が震えている。

(リラックスしなくちゃ、このままじゃ冬樹くんといい感じにはなれない。がんばらなくちゃ)

「あ、西澤さん。歩いていくには少し遠いから、後ろに乗って?」

「後ろに乗る?」

「うん、自転車の後ろに。これ持ってきたからひけば痛くないと思うよ」

と、小さめの座布団を手渡す。

「わかりました」

後ろの荷台に座布団をしき乗る。

「よいしょ」

乗った瞬間、バランスを崩して落ちそうになってしまう。

キャッ

とっさに冬樹に抱きつく桃華。

「だ、大丈夫?西澤さん」

「ご、ごめんなさい!」

慌てて抱きついた手を離す桃華。

「謝ることないよ、西澤さん。出発するからさっきみたいにつかまって」

「い、いいんですか?」

「危ないからね、しっかりつかまってて」

「はい!」

またギュッと抱きつく、今度は冬樹の背中に顔をつけて、本当にしっかりつかまった。

自転車が走り出す、横乗りで顔を背中につけているので、冬樹の息遣いや鼓動が伝わってくる。

(冬樹くんも少しどきどきしてるみたい、自転車をこいでるからかな?)

自転車に乗っている時間が長く続けばいいと想う桃華、だけど時間を止めることは出来ない。目的地へついてしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ