その他小説

□縮まる距離
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手をつなぎ、一歩一歩進む。結構時間がかかったが、出口にたどり着いた。そこは山の中腹にあたる場所だった。草が生えている他に何もないようだ。

「何にもないね、ちょっと残念だなぁ」

「結局、何で光があったかはわかりませんでしたね」

そういいながら草の生い茂ったその場所を歩いていた。その場所は、草によって隠れていたがすぐ先が急な坂になっていた。

「西澤さん、あんまり遠くに行かない方が・・・」

その時

ガクッと桃華の顔が下がった。

きゃあ!

すぐに冬樹が走る、何とか腕をつかんだ。

「冬樹くん、一緒に落ちます。離してください!」

「何言ってるんだよ、西澤さん。今引き揚げるから」

しかし、冬樹の力ではやはり無理だった。二人で一緒に転げ落ちていく。

うわぁー

きゃぁー

ごんっ!

きゃあ

すごい音がして止まった。

ゲホッ、ゲホッ

「冬樹くん!」

「西澤さん・・け、ケガない?」

ゲホッ、ゲホッ

転げ落ちていく間、冬樹は桃華をしっかり抱きしめて守っていた。

「冬樹くんの方が怪我してます!」

「はは、西澤さんにケガがないならよかった」

「よくないです、今手当しますね」

冬樹の手や足には無数のすり傷や切り傷があった。

「しみますけど我慢してくださいね」

傷に消毒液をかける。

「痛い」

傷にばんそうこうをはっていく。

「いたた。西澤さん、ありがとう」

「いいえ、冬樹くんが守ってくれたことを考えたら・・・・・あの、その」

「何?西澤さん」

「いえ、なんでもないです」

「そお、そろそろ帰ろうか?」

そう言って立ち上がろうとする冬樹だったが、足をくじいたらしく歩きづらそうだ。

「大丈夫ですか?冬樹くんわたしの肩を使ってください」

「ごめん、西澤さん。ありがとう」

自転車のところまで歩いてきた二人、冬樹がこげそうにないので押して帰ることにした。
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