その他小説

□縮まる距離
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ついたのは町外れの山の洞窟だった。中は全く見通せそうになかった。

「何でも中からすごい光が出ているのが目撃されたんだって、来てみたかったんだけど一人じゃ心細くて」

「その光は何なんでしょうね、ワクワクしますわ」

「そお?よかった、西澤さんを呼んで」

「私も来てよかったです。でも、この洞窟は怖そうですね」

洞窟の前に立っていると徐々に恐怖がわいてきた。

「二人で行けば大丈夫だよね、ライトも持ってきたし」

「そうですね」

「行こうか、はいっ」

そういって手を差し出す冬樹、桃華が困っているのを見ると

「ほら、手をつないでおかないと怖いし、危ないから。嫌かなぁ?ならやめるんだけど」

「い、嫌じゃありません。ありがとう、冬樹くん」

ぎゅっと手をつないでその洞窟へ入っていく二人。地面を照らしながらゆっくり進む、少し行くとドームのような広い空間に出た。

「何だろう?この空間は。水によってできた訳でもなさそうだし」

ふっとライトを天井に当てる。

ばさばさばさ

その途端、大量のこうもりが飛びかいはじめた。ライトの方をめがけて飛んでくる。

「危ない!」

ライトを消して静かにする、しばらくするとこうもり達は鎮まった。

ドクン、ドクン

気がつくと桃華は冬樹に抱きしめられていた。やさしい鼓動に安心感を覚える。

(冬樹くん、わたしを守ってくれた)

「大丈夫?西澤さん。あっ、ごめん」

そういって慌てて離れる冬樹。

(あっ!離れてしまいました、もう少しあのままがよかったのに)

「だ、大丈夫です」

「それじゃ、先に進もうか」

ライトはつけられないので、手探りで進む。

きゃっ

つまづいて転びそうになる桃華を冬樹が支える。

「大丈夫?」

「はい、ありがとうございます。あっ、あちらに光が見えます!」

小さな光が向こうの方に見える。二人とも壁や下ばかり見ていたので全然気がつかなかった。

「あれは出口だね、外に秘密があるかもしれない!行こう」

「はいっ!行きましょう」
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