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□素敵なサンデー
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少し早く目覚めた日曜の朝。かかってきた電話は何かの映画のBGMのようにリズム良い音。最初に聞いたのが君の声だなんて、素敵だと思う。

「おはよう。サナエちゃん」
『おはよう。レオくん。起きてた?』
「起きて朝ご飯どうしようか考えてたところ」
『そう』
「そっちは?」
『朝ご飯用意しててレモンがないことに気がついたところ』
「レモン?」

テレビのリモコンを取り、チャンネルを天気予報に合わす。

“本日は全国的に晴れるでしょう。初夏の暑さになるでしょう。”

確かにカーテン越しにリビングに差し込む光は眩しく熱い。

『アイスのレモンティーを作りたかったの』
「良いね」

とても良い。こんな暑さを感じる朝にはお似合いな飲み物だ。

『でもなかったから普通にアイスティーに変更かな』

今、電話の向こうで彼女はきっと、ちょっと髪を揺らして残念そうに微笑っている。

「ねえ」

少し早く目覚めた日曜の朝に一番最初に恋人の声を聞けるのは素敵なことだ。

「今からそっちへ行って良いかな?」
『えっ』
「サナエちゃんに会いに行っても良い?」

会いに行くのはもっと良いこと。

『…うん』
「ありがとう。すぐに行くから」
『うん。待ってる』

会えるのはもっともっと良くて、喜んでくれるのはとっても素敵なこと。

『レオくん』
「うん?」

CMへ切り替わったテレビの電源を切る。受話器を肩に挟みながら財布とハンカチをズボンのポケットにねじ込む。

『わたしが電話してきた理由、わかる?』

そういえば、どうしてサナエちゃんは僕に電話してきたのか聞いてなかった。彼女は向こう側で小さく声を立てて笑った。

『レオくんに会いたいって伝えるためよ』

楽しそうな笑い声。肩と髪を軽く揺らしているみたいな、くすくす女の子特有の可愛らしい微笑い。

『でもレオくんから先に言ってくれたね』

スニーカーを履く。お気に入りのシーブルーの。片手だけで靴ひもを結ぶ自分を器用だと自画自賛。ドアを開けて外へ出たら今日が本当に良い天気だとわかる真っ青な空と太陽の黄色い光が目にちょっと痛い。

『嬉しかった』

頬が少し熱く感じるのは気温のせいだけじゃない。

「そんな風に言ってもらえて僕も嬉しい」

二人してくすくす笑ってからサナエちゃんは再び待ってるね、と言って僕は返事を返して電話を切った。眩しい日差し。初夏を匂わす暑さと匂い。こう日は冷たい飲み物が良いんだ。僕を待ってくれる素敵な恋人にレモンを買って持っていこう。朝食にアイスレモンティーを飲んで、スライスしたレモンが余ったら蜂蜜につけ込んでお昼の三時のおやつにしよう。それでもまだ残っていたら涼しくなる夜に温かいレモネードを作ろう。レモンの香りを漂わせ、二人でくすくす微笑って過ごすのはきっと、すごく素敵な日曜日。





END

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