□秋風
1ページ/3ページ

あなたがいないのが、こんなにも虚しいことなんて知らなかった。

長い長い刻の中で寂しいなんて感じたことなどなかったのに。
興味以外で誰かに好意を抱くことすらなかったのに。

己の存在意義とは対極を示す、生きようとするまっすぐな瞳にいつしか夢中で、手放したくない、そう思っていた。

そしてあなたも僕から離れることはない、できないと思っていたのに、それは単なる過信だったのか。

別れを告げたあなたの気持ちなんてわかりはしないけど。
いや、知りたくもないけど。

いつも僕の左にいた、頭一つ分小さいあなたの面影がまだ鮮明に残っていて、それが更に喪失感を生んだ。

カサリ

半歩足を踏み出せば、足元にちりばめられた落ち葉が乾いた音を奏でる。
不規則に立ち並ぶ木々に囲まれたこの場所で、僕はあなたと出会った。

もし偶然にも街であなたを見掛けることがあるなら、その時はあなたは別の男性(ひと)と歩いているのだろうか。
それとも僕がまた違う女性(ひと)と一緒にいるのだろうか。

秋の少し乾いた冷たい風が頬をかすめ、それと共鳴するかのように周辺の枯れ葉がざわついた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ