□秋風
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あれから季節がちょうど一巡りしたことに気付く。
初めて会話を交わしたのも木枯らし吹きすさぶ茜空の下だった。

あなたと出会ってから、僕は変わった。
本当の意味での笑顔を向けられるようになったのもあなたのお陰なのだろうか。

ふと、思い出したかのように立ち尽くしたまま、自分の両手のひらに視線をやる。

紫色の、シックな革製の手袋。
必要ないと言ったのに、あなたが有無を言わさず僕にくれたもの。
あなたもお揃いだと言って、同じデザインの色違いのものを着けていたのだったっけ。

ふっと自嘲じみて笑うと、それを外して代わりに普段の薄水色のもの――身体の一部――に変更した。

――ビュォォオ

一際強い突風に煽られ、落ち葉が渦を成して巻き上がる。

僕もそれと同時に手のひらを開くと、朽ちた葉と共にあなたに貰った手袋もまた、風に舞いながら視界の中で小さくなっていった。

そしてあなたとの思い出も流そう、この秋風に乗せて。


END
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