僕のこの手に出来る事は、とても少ない。
僕の大切なものを傷付ける、全てのものを排除する事。
僕の気に入らないものを壊す事。
たったそれだけ。
君をやさしく撫でることは疎か、手を繋いであげる事さえ出来やしない。
無力な両手。
「ねぇ、隼人」
「何だ、」
耳朶を柔らかく擽る甘い旋律が、放課後の音楽室を満たす。
僕は机に頬杖をついて、鍵盤の上を優美に滑る白い指を睛で追った。
「雲雀?」
「…うん、」
不思議そうな顔で此方を向いた隼人の手を取ると、彼は少し恥ずかしそうな顔で頸を傾げた。
僕は、憧れにも似た尊敬を込めて、君のミルク色の指先に口づけを。
「やっぱり君は素晴らしい、と思っただけだよ」
こんなにも美しいものを生み出せる、優美な君の手。
グリル・パルツァー的キスお題8
1:手の上に尊敬のキス
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