庭球

□疾風
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季節の変わり目には強い風が吹くけれど。
「真田」
河川敷もかなり強い風邪が吹く。
「どうした?」
「…すごいね」
真田はさっきから河川敷を走っている。
でも俺はそれを眺めているだけだ。
一緒に走ろうとしたら止められて、ストレッチをやらされている。
「ダメだぞ」
真田は走るのを止めて俺の所へ戻ってくる。
「どうして先に…」
「ダメだからな」
俺の心を先読みしてしまう。
ちょっとぐらい走らせてくれてもいいのに。
無理しなければ大丈夫なのに。
「幸村」
真田は呆れたように俺を呼ぶ。
「お前はすぐに無理をするだろう」
「そんな事ないよ」
「絶対そうだ。どれだけの付き合いだと思っている」
そう言われると何も言えなくなる。
「お前が本気になったら誰が止めるんだ」
そんな事を言われたら更に。
「それにお前には体力温存しておいてもらわないとな」
さりげなく腰元を触るのは抜け目がないと思う。
本当に真田は…、俺に反論させてくれない。
「ムッツリスケベが」
だからせめて、意地の悪いことでも言わなければやっていけない。
「そんな俺が好きなのにか?」
それを意外な言葉でかわすのは卑怯だと思う。
そんな事、自分自身がよく知っているよ。
「…可愛くない真田はもう10周してこい」
ちょっと男前に答えてやると真田は微笑んで、本当に走りにいってしまった。



…後、10周…、その間の待つ時間をどうしたらいいのだろう?


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