庭球

□悩める者達よ
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空をヒラヒラと飛んでいた。
それは自分にとって極々当然のことだった。
広い広い世界に自分という存在はどれだけちっぽけなモノかを知っていた。

「忍足?」

跡部は窓を眺めている忍足に声をかけた。

激しい雨粒が窓を叩いていた。

それをずっと忍足は見ていたのだ。
どこか上の空で。

「ん〜」

返事もどこかおかしくて…。

「調子が悪いのか?」

心配になってしまう。跡部の方が落ち着かない。

雨音はドンドン激しくなるばかりだ。

「そんなことあらへんよ?」



だったら、どうしてそんなに寂しそうに外を眺める?




どこか遠くで雷鳴が聞こえた。

まだまだ、遠い。どこか遠くで。

「侑士」

「な、なんやの。景ちゃん!」

抱きついて、しがみ付いて、どこか遠くにいってしまいそうな忍足を引き止める。

そんなのは、跡部の流儀に反していたかもしれない。

でも、そうしなければならにような気がした。

「俺様にも言えないのか?」

アァ?とすごんでみたが、内心は焦っていた。

忍足が何を考えているか全く分からなかった。

「かなわんなぁ」

忍足は細く微笑む。

アリガトウと言うみたいに、跡部を抱きしめた。

「辛かったら辛いと言え」

「ウン」

「甘やかしてやるぐらいの許容ぐらいある」

「大好きや、景ちゃん」




雷鳴が近い。

ヒラヒラと飛んだら濡れてしまう。
たまには休憩だって必要だよ。
雲はそう言って雨を降らせた。

END

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