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□奇妙なBD
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ケーキの蝋燭は静かに燃えていた。
生まれた者を慈しむかのようにして。
パーティーの出席者は次々に、今日生まれた者に賛辞の言葉をかける。
『おめでとう』
艶やかな包装紙、リボン。
小さい物から大きい物まで、たくさんのプレゼントが与えられる。
「すまんな」
渡されるプレゼント全てにそう言って、真田は最大限のアリガトウの気持ちを示す。
「皆、忙しい中、すまなかったな」
パーティーはその一言を最後に幕を閉じた。

たくさん、たくさんプレゼントが並ぶ。
柳、仁王、柳生、切原、丸井、ジャッカル…テニス部員の物が大半を占めていた。
でも、たりない。
モノが足りないとかではなく、モノがもっと欲しいとか、モノの数とかではなく。
足りない、と思えば満たしたくなる。

寂しさのようなものをまぎらわしたくて、真田は家をでた。



仄かに夜の寒さが残っていた。
だが、真田は構わず歩いていた。どこかに目的地があるようでなかった。
暫く、歩いていた時だった。
誰かに名を呼ばれた気がした。
辺りを見回すが、誰もいない。いつの間にか見知らぬ所に真田は立っていた。
また、暫く歩き出す。
また、呼ばれた気がした。勢いよく振り返ってみると、
「真田!」
幸村が立っていた。
「幸村!?どうしてここに」
「さて、どうしてかな?」
「お前は今、入院中だろう。どうして抜け出してきている」
「だって…」
「お前という奴は…」
外気が少しだけ寒いのを真田は感じていたし、その冷たさが幸村によくないような気がした。
「真田?」
だから、幸村を抱きしめた。
「何?」
「寒いだろ」
「真田は暖かいよ」
腕から伝わってくる温もりに真田は安堵する。
幸村、という存在は自分の中でとてつもなくでかいものとなったのはいつだろうか。
「真田、ねぇ、真田!聞いて…」
幸村は真田の首に細くなった腕を絡めた。
そして、耳元で囁く。
『誕生日おめでとう』
甘く耳をうつ響きは身体を震わせて、心も身体もどこか遠くへ飛んでいった。





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