庭球

□素直になるまで5秒前!!
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「宍戸さん、軽井沢に行きませんか?」
夏休みが始まって間もない頃のある日の部活帰り。
食事に行きませんか?とでも言う様なノリで鳳が言った。
「はぁ?なんで俺が行かなきゃなんだよ!」
まったく、休みの日までお前と過ごしていたら体が幾つあっても足りない!
折角、部活も休みになろうとしているのに…。
「宍戸さんいなかったら…淋しいじゃないですか…」
だんだんと声のボリュームが小さくなる。
たく、そんな風に言われたら断れなくなるじゃねぇか。
「でもよ。俺、テニスしなきゃだしなぁ」
わざと拒んでみせる。
どおいう反応を見せるか…。
「それなら大丈夫ですよ!うちの別荘にはコートありますから!」
急に明るくなった鳳をみて、躯が反応する。
「行きましょうよ!ダブルスはどんな事があっても離れちゃいけないんです!」
あー、俺も大概…バカだ。
「どんな言い分だよ…」
「とにかく!練習相手はしますから!」
「わかった、わかったよ…行ってやるよ」
まったく、そんなによって抗議するな…。やばいんだ、お前のお願いには、弱いんだよ。
そんな宍戸の心を見抜いたのか、鳳は更に近寄り耳元で呟いた。
「でも、夜の保証はしませんよ」
と、言い残してにこやかに手を振り、去って行った。
「…夜の保証はないだと…」
しばしの間、呆然としていた宍戸であった。



そんなこんなで約束の日がやってきた。
いつも思うがこいつはかなりのボンボンだ。
なぜに高級車の迎えがうちの目の前に止まっているのか!
───ピンポーン
「お邪魔します。迎えに来ましたよ〜、宍戸さん!」
「みりゃわかるよ。そんなに浮かれるな…」
そう言って鳳より先に乗り込んでやった。
鳳は車の中でも上機嫌だった。
どうにかしないと、とてもじゃないが帰る頃には死んでいるかもしれない。
こうなったら!
と、考えついた頃には目的地に到着していた。
車から降りて、別荘を見上げてみる。
「それにしてもでかい別荘だなぁ」
「そうですか?海外の方がこれよりも大きいですよ」
か、海外………。
それにしてもサラッと発言してくれる。
一瞬、凍りついちまった。
「こんなに部屋がある意味があるのか…?」
なんとなく聞きたかった。
本当の狙いとしては部屋割りを聞きたかったのだが…。
「ええ、父が人を招いたりした時に…」
と、普通に返される始末だ。
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