ポケモン擬人化 等

□悪の姉弟
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「リン様、僕の服を着てすぐにお逃げ下さい」
「レンは……どうするの?」
「僕はリン様の身代わりになりますよ」


 レンは優しく微笑んだ。
 きっとこれが、彼の見せる最後の笑顔だろう。
 レンはリンの双子の弟だった。
 ただ、大人達の都合でこんなに立場を違えてしまったが。
 リンはこの国を統一する王女だった。
 レンはリンに仕える召使。
 つまりレンがリンに敬称を付けるのは身分故なのだ。

「でも、それじゃあレンが……っ!」
「大丈夫、僕等は双子ですから。きっと誰にも分かりません」

 確かに顔はそっくりだ。
 だが性別が違う。
 十四歳ともなるとレンの声もリンに比べて低くなるだろう。
 しかしレンはお構いなし。

「レン、御免ね……」
「リン様……」


 リンは涙を流し、レンを力強く抱きしめた。
 思えばリンが王女になってから二人の間に溝があったのかもしれない。
 リンがレンを抱きしめたのも王女になる前が最後だ。
 レンも、リンが王女になってからは会う時間も減った。
 仕事以外で会えることもなくなった。
 呼び方も変えた。

「……リン様、時間がありません。早くお逃げ下さい」
「……」


 リンはレンから離れると他の召使達に連れられ部屋を立ち去った。
 その直後、兵士達が現れレンを強引に牢に投げ込んだ。
 彼を――王女リンだと思いこんで。

(リン様――リン、逃げて、生き延びて、僕の分まで……)



 その日の三時、教会の鐘が鳴る時間。
 王女リン――レンは露と消えたと言う。




END
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