ポケモン擬人化 等

□闇の中で失った存在
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 あの日は真っ暗な日だった。
 全てが闇で、全てが暗黒。
 自分の存在さえ見失いそうなくらいに。
 でも、見失ってはいけないものまで見失った。
 もう逢えないかもしれないと思ったとき、胸が締め付けられそうだった。


【闇の中で失った存在】


「おねえちゃん!」
「レイム!?」

 家が炎に包まれた。
 町も、家も、人も、全てが焼かれている。
 理由は簡単だった。
 国の反逆者がこの町に逃げ込んだ。
 それだけのために沢山の命を犠牲にしているのだ。

「おねえちゃん、助けて!」
「待って、すぐに行くから!」

 少女――レイムの周りには炎が渦巻いている。
 大人でも躊躇いそうなほどの大きな炎だ。
 しかしレイムの姉――美翠は炎など気にならない様子だった。
 自分の服や髪が焼けるのも気にせずレイムの元へ向かう。
 そのとき。

「子供が何やってるんだ。早く逃げろ!」
「でもレイムが……っ」

 近所に住む男性だった。
 彼は美翠を抱えると安全なところまで非難させようとする。
 美翠はレイムも助けてほしいと頼む。
 しかし男性は美翠を一睨みするとレイムのことなど視界に入っていないような素振りを見せる。
 だんだんとレイムの存在が遠くなる。
 やがて、レイムの存在は闇に呑まれたように消えて見えなくなった。
 一瞬だけ、レイムの寂しそうな笑顔が見えた気がした。

「レイ……ム……。酷いよおじさん。レイムを見捨てるなんて!」
「ふん、子供なんて何も出来ないじゃないか。お前の命が救われただけでも感謝してもらいたいな」
「私、戻る! あのままじゃあレイムが死んじゃうもの!」

 タッと美翠は駆けだした。
 男性が止める声も聞こえない。
 ただ、妹が待っている。
 その一心で燃え盛る町をひたすら走った。

「レイ……ム……?」

 元の場所に辿り着いたとき、既に妹は居なかった。
 荒い息を整えながら、美翠はレイムの姿を探す。
 結局、レイムの姿は見つからなかった。

(御免ね、レイム。私が……私が無力だったから、居場所が分からなくなっちゃった。
 レイムは……どう思うかな、私のこと。すぐ諦める駄目な姉だって、言うかな……)

 美翠はそのまま意識を失った。
 気が付いたとき、美翠は小さな小屋で寝ていた。


 強く願っても、もう逢うことができない。
 居場所も分からない。

Ma io continuo cercarlo.(でも私は探し続ける)

Perché è la riparazione per crimine di una più vecchia sorella debole.(無力な姉の、罪の償いだから)


fin...
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