小説

□Best Partner
1ページ/2ページ











「最後だったんに…っ」








君のこんなにも弱々しい顔なんて


今まで見たことなかった



















Best Partner












 












全国大会が終わった


優勝することは出来なかった





みんなで泣いて、泣いて、泣いた


もう涙が出なくなるんじゃないかっていうくらい

涙が枯れるほどに泣いた







だけど


財前は泣いてなかった


ずっと

ぼう、と空を見上げていた





心配して声をかけてみたけど

いつもの生意気な台詞は返ってこなかった











東京から新幹線で大阪に着いて

それからみんなで学校に帰って来た




テニスコートをみていると

また泣きそうになってしまった



俺たちはここで

全国優勝を目指して

懸命にボールを追いかけていたんだ



暑い夏も

寒い冬も



仲間たちと一緒に















「謙也さん、」













その声に我にかえると

周りには仲間たちはいなくて


ダブルスのパートナーの財前だけが残っていた


いつのまにか解散になったらしい
















「何してるんスか、はよ帰りますよ」



「お、おん…」


















財前は校門に向かって歩き出す

その背中をみて


また泣きたくなった





財前とのダブルスももう解散


もう財前と一緒にテニスすることもできないのか

ダブルスを組むこともできないのか


もう一緒に居れる時間も減ってしまうのか




そんなの嫌だ







財前の背中は

なぜかいつもより小さく見えて

















「っ財前!!」














俺は一人で先を歩く財前を呼びとめる

止まった財前と俺との距離は結構あった


夕日に照らされながら振り返る財前を見ると

妙に悲しくなって

泣きそうだったけど涙をこらえる


















「なんスか…」

















めんどくさい、

と言いたげな表情をしていた


けれど

いつものキツい顔じゃない

どこか悲しげで、切なげで

見ていて胸が苦しくなった



















「…お、れ…っ、いやや…」



「…はい?」



「まだ、財前と…テニスしてたいねん…っ!!」

















俺が言うと財前が目を見開く

その後ぐ、っと唇を噛んで
こっちから顔が見えないくらい深く俯いてしまった


俺のわがままだった
こんなこと言ってもどうしようもならないのに
つい口から本音が出てしまったんだ














「…ごめ、ざいぜ、ん」











謝るけど返事がない

最後までもわがままでどうしようもない先輩とか思われたかな、

小学生か、って突っ込まれそうやな、







でもな、財前





まだ俺、お前とテニスしてたいねん




お前とダブルス組んでたいねん









知っとった?
















俺、お前のことが好きなんや










次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ