小説

□逢いたかった
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空を見ていたら


君に逢いたくなった


















逢いたかった



















RRR...♪




4月13日
午後11時30分過ぎ


勉強中だった俺の携帯が鳴った

電話の着信を告げる音だ、



シャーペンを置いて携帯の表示を確かめると











「謙也…?」









同じテニス部で
同じクラスで

そして
恋人である謙也からの電話だった


通話ボタンを押して応答した














「もしもし、」




『もしもし、白石?』




「、おん」














声を聞くだけで顔がゆるんだ


恋人ってすごいんやな、


妙に感心して俺は勉強机から離れて窓へと歩く

カーテンめくり窓を開けると
生温かい風が部屋に入り込んできた














「…どうしたん?こない時間に」




『んー…急に白石の声聞きたなってな』




「そ、そうか…」














やけに顔が熱くなる

女子みたいだけど

そんなこと言われたから変に緊張した


謙也の低くて優しい声は
いつ聞いても落ち着くし好きだ













『なんてな、』




「へ?」




『もうちょいで白石の誕生日やろ?』




「あ…」




『せやから、一番におめでとう言いたくて、早く電話してもうた』


















どうしよう、

とてつもなく嬉しい…


自分の頬が熱を持っていくのがわかった

きょろきょろ、と視線を泳がせる














「お、おおきに…」



『なんや、照れてるん?』



「なっ!!?んなわけないやろ!!!」















泳がせていた視線を空の星に止めた

雲ひとつなくて
いつも以上に綺麗に見えた















「星キレーやな」













思わず口から言葉がこぼれてはっとするが














『俺も見とる』












謙也がそう言ったからほっとする




窓から身を乗り出した
生温かい風が身体を包み込んで、気持ちいい











「…、」












…なんでだろう、


空を見ていたら

謙也に会いたくなった



今、同じ空を見て

互いの声を聞いているから?




わからないけど















『…、白石』




「…ん?」







『今から…会いに行ってもええ?』



















その言葉に胸が跳ねた


謙也は自分と同じことを考えてたのか



そう思うと


胸が苦しくなって

もう謙也のことしか考えられなくなって














「…て、」






『え?』





「会いたい…謙也、来て…」



















止められなかった


自分の欲を吐いてしまった



今、謙也に会いたくて会いたくて、しょうがない













『…っ、今、チャリかっとばしてくから、待っとって』












そしてプツン、と通話が切れる



けど
じっと待っていることなんてできない俺は

適当に上着を羽織って
急いで部屋を出た














「友香里っ、ちょぉ出かけてくるっ!!」





「え、クーちゃん!?どこ行くん!?」














妹に出かけるとだけしか告げなかった

あとで親に怒られるのは確定だろう




それでも


早く謙也に逢いたいから



全速力で家を出た


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