みじかいの
□優しいだなんて言わないで
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修兵「…また、ここにいたのか。」
花音「檜佐木、副隊長…。」
弱弱しく振り返った彼女がこれほどまでに小さく見えたことはなかったと思う。
修兵「こんな夜に、女一人で出歩くなんて。」
俺はそう言いながら、春風の横に立った。
目の前には、2つの石が立てられている。
1つは、東仙前隊長のご友人も墓。
そしてもう1つは…。
花音「檜佐木副隊長に、女扱いされたの初めてです。」
そう言って弱弱しく笑うと、視線を石へと戻す。
花音「ここにいると、東仙隊長に会えるような気がするんですよね。そんな事ないのに。」
愛染元隊長の裏切りから始まった破面と死神の対決は、死神代行・黒崎 一護の力によって終結を迎えた。
だがソウル・ソサエティの損害も大きかった。
愛染元隊長と同じくソウル・ソサエティを裏切った市丸隊長、そして東仙隊長もその戦いによって命を落とした。
修兵「春風、お前…。」
花音「大丈夫ですよ、私。」
何が大丈夫なんだ。
俺は知ってる、コイツが東仙隊長に対して抱いていた気持ちが“尊敬”でも“信頼”でもないって事。
修兵「俺に気は使わなくていい。」
花音「無茶言わないで下さいよ、」
そう彼女は薄く笑いながら俺の顔を見た。
俺は自分の腕が彼女に伸びようとしている事に気が付いて、とっさに引っ込めた。
花音「檜佐木副隊長、知ってますか?」
修兵「なんだ?」
“優しさってその瞬間にはかりきれない安心感を与えてくれるけど、”
花音「その優しさを失った時の傷は、悲しみしか与えてはくれないんですよ。」
俺はその言葉に何も返せなかった。
確かに今彼女の横にいるのは俺だ。
彼女が話をしている“物体”も俺だ。
でも、彼女が想いを伝えようとしているのはここにいる“俺”ではないのだ。
修兵「なら、何だったらいい?」
花音「何…、ですか?」
修兵「優しさが一瞬の安心感しか与えられない。じゃぁ、何だったら永遠に寄り添っていられる?」
“永遠”なんて現実味のない言葉は、口にするもんじゃないと俺も思う。
花音「…分からないです。」
修兵「…探したらいいさ。」
花音「え…?」
探せばいい。
彼女の気持ちが少しでも軽く、そして穏やかになれる何かを。
花音「檜佐木副隊長って、優しいんですね。」
優しいだなんて言わないで
そうしたら、俺は
君に永遠に寄り添えなくなるから。
*