みじかいの

□春と、君と、ときどき恋
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花音「日番谷隊長、確認お願いできますか?」

冬獅郎「わかった、そこに置いておいてくれ。」

俺が指で示した場所に書類を置くと、春風は再び自分の机に戻り仕事を再開した。

この春、俺の隊の第三席に配属された春風花音。
今季真央霊術院を卒業したばかりの新米死神だが、鬼道も剣術の成績のトップクラス。

松本のススメもあり、俺は春風を自分の隊へ引き抜いた。

表向きはそんな理由だ。

俺が春風を引き抜いたのには、ちょっとした理由がある。

昔、それこそ数十年も前の話だ。

ホロウが出現したという知らせを受け、十番隊が派遣されたことがあった。

場所は人気のない、町はずれの荒れた場所。

俺たちが到着した時、襲われかけている女がいた。



綺麗な漆黒の髪の毛をして、吸い込まれそうなほど大きな瞳をもっている女がいた。



正直、真央霊術院で春風を見るまではそんなこと忘れていた。

あのころよりも伸びた髪の毛、だが瞳の輝きは変わっていなく俺はすぐに春風があの時助けた女だと気付いた。

花音「ん〜…。はぁ…。」

冬獅郎「疲れたなら、休んでいいぞ。」

花音「え…そんな!隊長が働いているのに、私だけ休むなんてできません!!」

そういうと再び筆を持ち、書類作成を再開した。





一目ぼれなんて、絶対にあり得ないと思った。





その時の俺は(まぁ、今もだが。)色恋沙汰にうつつを抜かしている余裕などなく、ましてやどこの誰かも分からない相手が気になっているなど。

あまりにも自分らしくなくて、俺は心の奥底にわざと仕舞い込んだ。

だが、コイツを久しぶりに見た時背中に衝撃が走った。

やっぱり、一目ぼれはあり得るのかもしれない、と。

花音「隊長、お茶飲みませんか?」

冬獅郎「だから、休みたければ休んでいいって言ってるだろ。」

花音「隊長も一緒に休みましょうよ!!うん、そうしよう!!」

何を独りで納得したのかわからないが、綺麗な漆黒の髪の毛を揺らして春風はお茶をくみに行った。

冬獅郎「…はぁ…。」

この気持ちを、俺はどこに持っていけばいいんだ?

そもそも、何だ?

松本は最近空気を知ってか知らずか(松本の場合、確信犯だが。)執務室に来て仕事をサボるという事がめっきり減った。

…仕事をしないのは相変わらずだが。

それでも春風が松本の分までカバー出来る処理能力を持っているので、支障がないと言えば支障は無い。

花音「隊長ー隊長!!」

冬獅郎「なんだ、騒々しい。」

「隊長」と呼ばれれ心が少しだけほっこりするのも、コイツだけ。

花音「見てください、これ!!すっごく美味しそうなお団子です!!」

お茶と一緒に綺麗に皿に盛られてる、三色団子。

団子一つでこんなに嬉しそうな顔をするとは。

花音「ほら、隊長も一緒に食べましょー?」

普段の俺なら「お前だけで食ってろ」とつっぱねるのだが、

冬獅郎「…仕方ねぇな…。」

コイツといられるなら、こうやって仕事を進めるのも悪いものではないと思った。



春と、君と、ときどき恋





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