短い話

□世界
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朝、あいつを見かけると胸かすっげぇ苦しくなるんだ。
教室でも、廊下でもどこででもなんだ。
あと、あいつが笑うともっと苦しくなって、体と胸が熱くなる。

あいつが他のやつと喋ってたらすっげぇ締め付けられる。
痛い。



これって、もしかしてーーー…

「病気じゃないっすか!?」
俺の目の前にいる尊敬する十代目となぜかいっつもいるうぜぇ山本に問う。
あ、やっぱ山本には聞いてねぇ。
十代目の方をみる。
十代目はぽかん、としてから素晴らしい笑顔でほほえんだ。

「それっていつも名前ちゃんがいるときなんだよね?」

「はいっ!そうっす!」

そう勢いよく答えると、十代目と山本は笑い出した。
山本、笑ってんじゃねえ!
もし、俺が病気だったらどうすんだ。
十代目の右腕として早く直さなきゃなんねーから聞いてんのによ。


十代目と山本のヤローはひとしきり笑った後、俺の方を向いた。
十代目が神妙な顔をして口を開く。
俺はごくり、と唾をのんだ。

「獄寺くん……それはね、」

十代目が一息おく。
俺は十代目の進言を待った。
その間も山本の口には笑みがあった。
やっぱいけ好かねぇヤローだ。

そして、向こうからあいつの笑い声が聞こえた。
また、胸がきゅう、と苦しくなった。

心配気に俺はもう一度しっかりと十代目の目を見た。

「獄寺くんそれはね、恋だよ。」

最後はあんまりにもあっさりとそれは口に出された。
俺は数回瞬きを繰り返す。

恋?
俺が?
あいつに……

恋!?

ボボッと顔が熱くなるのがわかる。
十代目は、微笑みながら、
「胸が苦しくなるのは、名前ちゃんに恋してるからだよ。胸が痛くなるのは、他の人と喋ってる名前ちゃんに嫉妬してるから。」



数十秒してやっと理解できた俺の顔は真っ赤になった。
向かい側に座ってる山本の声が聞こえた。




俺の世界がピンク色に染まってく。
(おーい、名前!)(んなっ!?山本!!)(なにー?)
(うっ、こ、こっちくんなっ!)



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