うたたね

□いない場所
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3月

3年生が卒業して二週間

春休みに入り部活も毎日のようにやってる

新人戦があと2日に迫ってきて

部長に任命された俺はめんどくさいながらも

自分なりに責任感を持ってやってる


「ほな、今日もランニングから各自始めて」

「「はいっ」」

「なぁなぁ財前。ワイ早よ試合したいわ」

「ええから早よ走ってこいや」

「いーやーやー」

「しゃぁない。白石部長よぼか」

「走る!!走るから勘弁してぇな!!」


情けないな。俺。

結局まだ白石部長に頼ってるねんから…



時間なんかあっちゅーまに過ぎて

新人戦当日になった。


「ほんなら今日のメンバーしょうかいすっぞ!はっ!すっぞ!」

オサムちゃん声でかいっちゅーねん


「とっぱじめに、財前部長。かましてこい」

「はい。」

オサムちゃんが俺に対して部長って呼ぶようになった


それからほかのメンバーが呼ばれていく

俺らのチームができていく

でも、そう簡単にいかんかった

俺はいつも通り楽に勝ったけど

初めて試合するやつらはどうも緊張してる。


こんな時ってなんていえばいいんや?

いつもはユウジ先輩と小春先輩が場を盛り上げてくれてた

それで、みんなが後に続いてたんや…

部長がアドバイスしてくれて

謙也さんや師範があったかい言葉かけてくれて…

「あー。ワイおもろなくなってきたわ。そといっとこっかなぁ」

「コラ。よう見とけ。」

「せやかておもんないやん。」

わがまま言う金太郎のお守りを部長と副部長と千歳さんがしてくれて…


痛感する。


今まで先輩にどんだけ力もろてたか

痛感する。


俺がどんだけ無力か…


初めて俺に居場所をくれたんも

笑う場所をくれたんも

受け入れてくれたんも

みんな、先輩やったのに



全然成長できひんかった

こんなんじゃ

先輩ら居らんくっても大丈夫って姿見せられへんやん




「俺一人じゃ…このゴンタクレ、面倒見きれませんわ…」




ずっと先輩らと居ったから、チームメイトのことなんてわからんし

「お前の学んだことはなんや?財前」

「え?」

オサムちゃん。

「お前はこの1年間。何を学んだ」

「俺は、仲間の、たいせつさ、思いやり…」

ほかにもまだまだいっぱい。

数えきれへんほど学んだ

「じゃぁ、お前の作りたいチームはどんなチームか、考えてみぃ」


俺の作りたい、チーム…


「どんなチームか考えて、あとは実行するまでや。
 この1年、悔いの残らんようやりや
 ほら、みんなも顔、見てみぃ」




俺、ずっと過去のことばっかみてて

前を向けてなかった

自分には無理って決めつけてた

だから変わられへんねん。

だから、ほかの部員とも距離が生まれんねん



よし。


「みんな。自分の思った通りにすればええねん。
 勝ったもん勝ちやぁ!!!
 気合入れていくでぇ!!」


オサムちゃん。

作ったんで。俺らだけのチーム。

先輩。

今年こそ全国優勝したんで。

俺のほうが上やっちゅーこと見せつけたるから

覚悟しときや。

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