いつわりびと空

□ホントの気持ち
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「……むぅー」
誰もいない森の中、空は一人で考え事をしていた。
「…なんでや、なんであのチビが薬馬と話すとこないに胸が痛むんや?」
胸が痛む…何かの病気か、と思った。そのまま考え込んでいて背後からの攻撃を避けられなかった。これにはしまった…空は内心舌打ちした。右腕をやられ使えなくなってしまったのだ。
…チッ、なんでワシがアイツの事で…
「…最悪や…」
ボソッと呟いた。攻撃した族は気味悪くニヤニヤしていた。どこか様子が可笑しい…そう思ったその時。
「!!!?なっ…く、あっつ…いィ…」
空に異変が起きた。身体が燃える様に熱い…攻撃された時の道具に何か塗ってあったのか…だが、今の空に考える余裕はなかった。
「…くっ…はぁ、はぁ…」
なんやこれ…アカン…なんも考えられん…
「へへ。すげぇ効き目だぜ〜。早くシちまおうぜ?」
族が何やら話していた。
ガシッ
「んやぁ?!」
族の一人が空の左腕を掴んだ。掴まれた時に空は甲高い声を出した。
「良い声してんじゃねぇかよ。もっと良い声で啼いてくれよ?」
空の着物の中に族の手が入って来た。サワサワと身体を触ってくる感触に空は…
「んっ、や…ふぁ…ぁ」
艶のある、色っぽい声を出してしまう。隠そうにも腕を押さえつけられていては隠せない…そんな自分が腹立たしい。ポロポロと涙を流した。
とそこに。
「…何やら騒がしいと思ったら…」
九十九だ。九十九は耳がいい。だから気づいたのだろう。空はこんなブザマな姿は見られたくはなかったが今はやむを得ない…九十九に頼らなければ…
「…つ、つくっ、も…ぁ…たす…」
“助けて”九十九は見逃さなかった。空が助けてと口だけが動いたのを…
「貴様等…」
九十九は族を簡単に倒した。
「…消えろ」
族は顔を真っ青にして逃げ出した。九十九は誰もいないかあたり一面を見渡した。
…誰もいない。
九十九は空に話し掛けた。
「…はぁ…何をやって…っ!?」
驚いた。空が泣いていたからだ。九十九は固まったまま動かない。いつもへらへらして薬馬に暴力を振るうあの空が泣いているからである。
「…さい、あく…や」
フルフル震えながら言った。よっぽど怖かったのだ。
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