ルナソル小ネタ

□資料整理
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ここはとある秘境にある
世界中の本が集まる図書館
とても平和で厳かな静けさに包まれた
館内に最早恒例と化した怒号が響く
館内全てに響き渡る様なそのよく通る声に
最早驚く者など居なくなっていた

ーどこ行きやがったあんのクソ兄貴ィイイイ!!!!!!ー

悲鳴にも似たその絶叫(しかし言い様のない
殺気も含まれているが)は当の本人も
当事者に届く事の無い事を知っている
悲鳴の様に聞こえるのは
半ば諦めが入っているからだろうか

はぁ……

薄暗い図書館の奥で
深いため息をつく青年がいた

どうすんだよ…コレ……

真っ白な肌に不釣合いな程の
蒼く美しい瞳が印象的な彼の瞳が
未だ嘗て無い程に暗く陰っている
顔を覆う指の隙間から見える彼の瞳に映るのは………
…山の様に積み上げられた大量の資料の束…束…束…
最早何部あるのか彼でさえも把握し切れてはいなかった

「百…二百…いや、軽く千は超えてるか……」

更にどんよりとした空気が彼を包み込む
本当はこれを二人で整理する
筈だった…
そう、その筈だったのだ
ここで冒頭のあの台詞を思い出して欲しい
そう、兄が居ないのだ
共に整理する筈だった兄が…

はぁああ…

再び深いため息をつく

「…しょうがない」

ー忌々しいー
とでも言いたげに吐き捨てると
おもむろに立ち上がった
そして資料に手を伸ばし…投げ捨てた

「やってられるかぁぁぁああああ!!」

この怒りと憎悪に満ちた叫びに
驚く…基怯えなかった者など居ないだろう
滅多に怒ることのない館長の一人が
…ブチ切れたのだから……
そして、それと同時にとんでもない殺気も
奥から漂っているのだから…

利用者が震え上がるのと
奥の扉が開くのとはほぼ同時だった
そして、今にも誰か殺りそうな殺気を纏った
セイアッドがぶあっつい本を両手に
真っ直ぐ外へと向かって行った
驚く者になど目もくれず…ーー

ーーーーーー

「…おい」

「…ん?nっだぁあ!?」

『ごす』っと鈍い音を立てて本が顔面にぶつかる
…否、めり込むと言った方がいいかもしれない…

悶絶する青年を尻目に
彼はしれっと言い放つ

「さっさっと起きろ仕事が俺らを待ってるぞ」

「うぅ…ちょっと待とうよ一体どこに兄の顔面に辞書落とす弟がいる?」

日に焼けた健康的な肌を持つ
青年が呻きながら反論するも
彼はそれさえもしれっと受け流す

「ここにいる」

わかってた、わかってたよ
と言いたげに頭を抱え蹲る兄になお彼は言い放つ
先程までの荒々しい口調が嘘のように静かすぎる声で

「何してんの、早く行くよ」

そして有無を言わせず連れていたのだった

「うえー…」

セイアッドとは対照的な健康的な褐色に焼けた
その顔に苦渋の表情を浮かべるのは
セイアッドの兄であるエオル
性格も対照的で余りにも反対過ぎて
何故仲がいいのか図書館の不思議になっていたりする
この二人が並ぶと本当に兄弟なのかと疑いたくなるが
それ以前に、エオルと並んだ時のセイアッドの顔色は
対照的なため悪く見える実際にはそんなことなどないのだが…

「…喋ってないで手ぇ動かせ」

…最早セイアッドに表情など…消え失せていた…

「いやだってk…」

ーこれ終わらないでしょー
と、言い終わる前に本が飛んで行く…

「あっぶねぇ!!!」

すんでの所で躱し弟を見やるが
何事もなかったのように作業を続けていた

「わかったよ!やればいいんだろ!!」

半ば泣くように叫ぶと
エオルも作業に戻った

ーーーー

終わったー!!!!!

叫んだのはエオル
セイアッドは…伸びていた…

とある秘境のとある図書館
今日もここは平和です

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