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□Gift
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『有吉ってパンダ好きなんだ?』

キカナイトの収録が終わった後、いきなり設楽さんにそう聞かれた。

『はい。そうですけど?』

『へぇー、意外〜』

設楽さんはそう言い、持っていたコーヒーを飲んだ。

『有吉って、意外と可愛いよね』

『は、はぁ?』

『パンダ好きで、よく動物園に行ってパンダ見てくるんでしょ?なんか可愛いじゃん。』

この人、絶対バカにしてる気がする…
元々ひねくれ者だからそう思うだけかもしれないが、そう思ってしまった。

『まぁ、パンダは癒やされますしね。こんな風にバカにされた時とか。』

『ひっでー!俺そんなつもりで言った覚えねーよ!?』

いつものように悪態をつくと、設楽さんは笑って反論した。

『パンダそんなにいいのかよー?』

『はい。設楽さんといるよりは。』

そう言った瞬間、設楽さんは急に不機嫌になった。
普段なら俺の毒舌は全然効かないし、むしろ上手く返されるのに、今日は違った。

『もういいや。終わったし俺帰るわ』

設楽さんはそう言い、スタッフに軽く挨拶をして足早に帰った。
スタッフもそうだが、共演者もびっくりしていたし、あのうるさい山崎でさえ、その時は口を閉じていた。

『どーした有吉?設楽さんと何かあったの?』

日村さんがすぐに俺の所に来た。

『いや…ちょっと僕も帰ります。お疲れ様でした。』

『え、ちょっと有吉!?』

日村さんを無視して、俺は設楽さんを追いかけるかのようにスタジオを出た。

廊下を歩いていると、バナナマンの楽屋があった。
もしかして…と思い、ドアを開けたら、やっぱり設楽さんがいた。
設楽さんは少し驚いた表情をした。

『何しに来たの?』

『いや、あの…さっきのは冗談というか、とっさにっていうか…。設楽さんといる時、本当は凄く楽しいんです。えっと、すみませんでした。』

あまりこの人に謝る事がないから、変に緊張して、自分でも何言ってんのか分からなくなった。
そんな俺を見て、設楽さんは吹き出した。

『別にいいよw 俺も悪かったし。その為に来てくれたんだ。
…あ、そーだ!これ渡そうと思ったんだ。はい。』

そう言って設楽さんは、小さなパンダのストラップを渡した。

『え、くれるんですか?何で?』

『有吉がそーゆーの好きだって聞いて、思わず買っちゃったんだよ。
さっき渡そうと思ったけど、なんかあの時言葉でちょっとイラってしちゃって。「なんだよ、人がせっかくあげようとしてるのに」って。』

さっきまでの不機嫌な顔と違い、設楽さんは笑顔になった。
その笑顔で俺も笑顔になった。

『ストラップ大事にしますね。』

『お!いつになく素直じゃん。』

『別に、いつも通りですよ』

そしてまたいつも通り、毒づいたり、言い争いもするが、それが俺らの
日常であり、幸せの時間だと思えた。
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